また、件のアパマンショップのサイトを見てみると、仲介手数料が無料という物件も多く掲載されています。では、その差額や無料サービス分をどうやって補填(ほてん)しているでしょうか。実はこれこそが前述した「付帯商品」のカラクリなのです。

 つまり、仲介手数料だけではビジネス的には成り立たなくても、付帯商品などを多く販売することで売り上げをかさ増ししているのが実態なのです。「仲介手数料無料」の宣伝はインパクトが大きいだけに、最近ではこのようなビジネスモデルの不動産業者が確かに増えています。

 もう少し付帯商品の例を紹介してみると、入居前の消臭代の他に、簡易消火器や24時間サービス、更新事務手数料などがそれに当たります。むろん、いずれも割高なケースがほとんどです。

 また、更新料がある地域は限られますが、これまでは「1カ月」という金額が一般的でした。最近は更新料1・5カ月、さらに事務手数料も上乗せして徴収されるような物件も増えているようです。「仲介手数料だけでは十分な利益が得られず、ビジネスとして成り立たない」。募集図面に記載された備考欄はそれを如実に表わしているメッセージと言えるでしょう。

 次に賃貸の成約件数が下降しているという背景が分かる下記のデータ(2018年12月発表「日管協短観2018年上半期4月から9月」公益財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協総合研究所)を見ていただきましょう。
 日管協総合研究所が年2回発表している日管協短観で、不動産賃貸の市場を分析し分かりやすくまとめてあります。同研究所のコメントによると、「賃貸の成約件数は下降しており、賃貸仲介の売り上げは横ばい、付帯商品の売上は下降」とあります。

 このデータから今回の爆発事故を考えると、目標とする成約数に達しなかったために、付帯商品である消臭剤が大量に余り、自ら処分せざる得ない状況に追い込まれた可能性があります。

 こうした問題の本質としては、賃貸の仲介手数料が時代に合わなくなっていることも要因の一つでしょう。賃貸の場合、特に地方は賃料も安く、仲介手数料では割に合わなくなっているからです。付帯商品で補填するか、物件情報を囲い込んで手数料を上げるしか売り上げを増やす方法がないのです。

 そもそも論ですが、なぜ賃料の1カ月分が仲介手数料の上限なんでしょうか。先にも記しましたが、仲介の仕事はケースよっては楽な場合もあり、逆に時間やコストがかかり、賃料1カ月分では割に合わないこともあります。もっと良い決め方があるのではないかと個人的には思います。

 この実情を踏まえれば、今回の事故でイメージがついた「アパマンショップ=悪質」ではなく、所管官庁である国土交通省の一部マーケティング不足による、末端業者へのしわ寄せの方が事の本質と言えるのかもしれません。宅建業法で定められた仲介手数料の上限が「賃料の1カ月分」という時代遅れとも言える規制の見直しが進めば、今後の不動産賃貸市場は良い方向に向かうのではないでしょうか。

 実際、空き家急増に対処するため売買物件の仲介手数料を上げたように、賃貸の安い物件にも何かしら手を打っても良いのではないかと思います(売買では2018年4月から、400万円以下の物件の手数料上限が緩和されました)。
記者会見で謝罪するアパマンショップリーシング北海道の佐藤大生社長。手前右は消臭スプレー缶=2018年12月18日、札幌市北区
記者会見で謝罪するアパマンショップリーシング北海道の佐藤大生社長。手前右は消臭スプレー缶=2018年12月18日、札幌市北区
 人生で不動産取引を経験する回数は、指で数えるほどという人がほとんどだと思います。それゆえ、不動産業者の言われるがまま、何が正しいのか分からないまま契約してしまうケースが多いのでしょう。賃貸では、火災保険の選択肢が顧客側になく、不動産業者の勧めるプランしか選べないという実態もあります。

 今回の問題を受けて、自分の不動産契約を振り返り疑問に思った人は少なくないでしょう。成約済みの物件を広告に載せて客を呼び寄せる「おとり広告」、スルガ銀行のシェアハウスをめぐる不正融資問題もあり、カモにされ、被害を受けるのはいつも一般消費者です。

 重ねて強調しておきますが、業者側だけでなく一般消費者もきちんと守られるシステムになるよう、そろそろ不動産賃貸に関する規制の見直しを進めるべきではないでしょうか。今回の件をきっかけに、不動産を取り巻く環境が少しでも良くなることを節に願います。