木村幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授)

 日韓両国の対立が新たな局面を見せている。目下の問題は、12月20日、能登半島沖の日本海で発生した韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊所属哨戒機に対するレーダー照射問題だ。

 この文章を書いている12月27日夜の段階で、この問題の焦点は韓国海軍駆逐艦が自衛隊哨戒機に照射したのが、対空ミサイルの誘導と主砲の射撃管制を行う火器管制レーダー「STIR−180」だったのか、それとも空中、さらには水上のターゲットにも使用できる捕捉追尾用の三次元レーダー「MW-08」にすぎなかったのかになっている。

 この問題を巡り、日韓両国が出している情報は明らかに相互に矛盾したものだ。その成否を判断するために必要な1次情報に触れ得る立場にない筆者にとって、現段階で日韓両国のどちらの主張が正しいのかを判断することは不可能であり、踏み込んで議論することは自重したい。しかしここで注目したいのは、この問題が日韓両国間に横たわる「海」を巡る、先立つ二つの事件の延長線上に存在することである。

 そのうちの一つは、今年10月はじめに韓国の済州島で行われた国際観艦式における海上自衛隊旗、つまり、旭日旗の掲揚を巡る問題である。事件の経過は以下のようなものだった。

 この韓国軍主催の国際観艦式は1998年、韓国海軍設立50周年を記念してはじめられたものであり、以後、10年ごとに行われてきたものだった。海上自衛隊はこの国際観艦式に1998年と2008年の過去2回全てに参加し、そこにおいては自衛隊旗である旭日旗の使用は問題にならなかった。

 しかしながら、今年8月、一部の韓国メディアがこの国際観艦式に海上自衛隊艦艇が「旭日旗を掲揚して」参加することを報じた後、状況は急速に変わることとなる。背後には8月15日の日本植民地支配からの解放記念日である「光復節」を前にして、「旭日旗」を問題視しようとする動きがあり、結果、韓国ではこの「旭日旗を掲揚して」の海上自衛隊艦艇の参加を問題視する声が高まることとなる。
韓国・済州島で開かれている観艦式の海上パレードに出席し、艦上で演説する韓国の文在寅大統領=2018年10月(聯合=共同)
韓国・済州島で開かれている観艦式の海上パレードに出席し、艦上で演説する韓国の文在寅大統領=2018年10月(聯合=共同)
 すると一転して、韓国海軍は自衛隊に対して「自国国旗と太極旗以外の使用」の「自粛」を要請することとなった。そして結局、海上自衛隊はこれを拒否、国際観艦式そのものへの参加を辞退することになる。

 二つ目の事件は続く今年11月、現在焦点となっているレーダー照射問題と同じ日本海上で起こっている。すなわち11月20日、1998年の日韓新漁業協定で設定された「暫定水域」で操業中の日本漁船に対して、韓国海洋警察庁所属の警備艦が操業停止要求した事件である。

 よく知られているようにこの「暫定水域」は、日韓両国の間に横たわる領土問題を巡る対立が両国漁業に与える影響を最小限にとどめるために、日韓両国の漁民が共に操業可能な水域として設定されたものである。当然、そこにおいて韓国の海上警察が一方的に日本漁船を排除できる権限は存在しない。