舛添要一(前東京都知事、元厚生労働大臣)

 東京都港区が南青山に児童相談所を建設する計画が公表され、一部住民が反対の声をあげて、大きな話題となっている。この問題は、テレビのワイドショーなどで取り上げられて全国規模の話題となり、芸能人をはじめ、さまざまな立場の人たちがコメントするに及んでいる。今のところ、反対派住民に対する痛烈な批判が圧倒的に多くなっている状況である。

 ある事やある人物が問題になり、そこに焦点が当たると、全マスコミが集中して報道し、標的にされた者のほとんどは「討ち死」にしてしまう。2018年を振り返ると、スポーツ界のパワハラ問題がそうであり、引退する力士や辞任する監督が相次いだ。

 テレビは視聴率、週刊誌は部数が命であるから、それが稼げるネタを探しまくる。そのような材料として、あるテレビ局が取り上げたのがこの青山の児童相談所建設問題だったのである。10月中旬のことである。

 都知事を辞めて2年以上が経過し、しかも都ではなく、港区が行う事業なので、私も話題を知ったのはそのテレビ番組がきっかけだった。とにかく「青山ブランドの一等地に迷惑施設を造られるのは困る」、「地価が下がる」、「港区からの説明がない」、「事業費が高すぎる」など、反対派住民の言い分通りの番組作りであった。

 反対派の火種に油を注いだつもりだったのであろう。港区は10月12日と14日に住民説明会を行っていたが、番組は会に集まった反対派住民の意見を反映させたものにすぎない。この住民説明会はテレビで中継されたわけでもなく、賛成派の意見が紹介されることもなかった。そもそも、賛成派はこの説明会には参加していなかったのではなかろうか。

 その後、他のマスコミ、特に朝日、読売といった全国紙がこの話題を取り扱うに及んで、少しずつ風向きが変わってきた。さすがに、新聞記事はテレビ電波と違って活字が残るので、データも間違いないように注意してあるし、賛否両論を併記するようにしてある。また、テレビのワイドショーのように、芸能人が思いつきで述べたコメントではなく、専門家、有識者によるきちんとした見解が掲載された。

 その後、児童虐待や不動産鑑定の専門家もテレビのゲストとして招かれるようになり、反対派住民などの無知や誤解を正していったのである。10月中旬に偏見に満ちた内容の放送を流した番組も、今では反対派住民の批判を展開している。確かに、誤りを正すことは悪くないが、テレビの安易な番組作りの実態がよく分かる。

 そもそも、番組作りに当たるテレビ局や下請けプロダクションのスタッフは、児童相談所とはどういう施設かということも調べずに作業をしていたのではないか。もしそうならば、反対派住民と五十歩百歩である。
都立青山公園(ゲッティイメージズ)
都立青山公園(ゲッティイメージズ)
 青山での児童相談所建設計画に反対するのなら、児童相談所に関する基本的な事実くらいは調べてから、発言したらどうなのか。インターネットで調べれば、情報はすぐに入手できるはずなのに、それも行わないで発言するのならクレイマーの資格もないと言わざるをえない。

 私は若いころ、表参道交差点の近くに住んでいたことがあるが、そこは今回の建設予定地、南青山5丁目の近くである。青山通りや骨董(こっとう)通りから一歩奥に入ると静かな住宅地となる。地下鉄の便利がよいことは最高であったが、日常生活に必要な買い物などは不便である。