久野潤(大阪観光大学講師)

 近年、改めて歴史ブームと言うべき現象が起きているのかもしれない。歴史好きの女性「歴女」や歴史アイドル「歴ドル」の存在をはじめ、歴史に詳しいことが一つのステータスとなるような時代となっている。呉座勇一著『応仁の乱』(中公新書)のような一見カタそうな書籍がベストセラーになるのも、そうした風潮と無縁ではなかろう。

 一方、近隣諸国とのいわゆる歴史認識問題についても、かつてのように一部で激しく議論されつつも結局相手国やその主張に同調する勢力に押し切られるというようなことはなくなり、かつてないほどに日本人が自国の歴史に目覚め、主張できる時代となってきている。

 筆者が小学生であった平成の初め頃には想像もつかないであろうこの状況を鑑みれば、平成という御代は、後世から見て戦後日本が自らの国史を取り戻す重要なステップとなった時代だと評価されるかもしれない。

 その平成最後の年(改元前の最後の年)となった昨年、百田尚樹著『日本国紀』(幻冬舎)がベストセラーとなり、筆者もかかわらせて頂くことになったのは何かの御縁であろう。『日本国紀』の監修依頼を受けたのは、昨年9月半ばのことである。その2日後に幻冬舎より500ページ超のゲラを受け取り、その重厚さに改めて驚くことになる。

 著者の百田尚樹氏には拙著『帝国海軍の航跡』(青林堂)に帯文を頂いたことがあり、編集の有本香氏とは何度かお目にかかったことがあったが、仕事で御一緒させていただいたことはなかった。それを今回、大御所ではなくこのような若手の歴史学者に機会をくださったことには本当に感謝している。

 ゲラを受け取った筆者は、本能的にワクワクした。念のために言うと、「売れそうな本だから乗っかっとこう」などといったものではない。日本を代表する作家である百田氏には百田氏なりの重厚な歴史観があり、それに沿った著作となろう。ただそこで、いわゆる大御所の学者が形だけの「監修」として名を貸すようなものではなく、発売前の大著に目を通したうえで意見を具申し、完成までの議論に参画できる(そうすることを求められている)という期待があった。

 そして、2週間かけてゲラをチェックしていった。筆者の専門は昭和戦前期の政治外交だが、他の時代も合わせて、ほぼ全ページに赤(実際のペンの色は、他の編集工程をはばかって青であったが)を入れさせていただいた。幻冬舎側のチェックも、相当細かいところまで行われていたことを付記しておく。
※画像は本文と関係ありません(GettyImages)
※画像は本文と関係ありません(GettyImages)
 自分の研究室での作業だけでなく、移動中も膨大なゲラを持ち歩いてチェックしたものである。そしてその後のやり取りも経て、校了となった。筆者は、奥付などの書誌情報上は「監修」としてクレジットされていない。ただ、自分のかかわり方として「監修」たることを、校了後の編集側とのやり取りや、本書末尾〈謝辞〉での記載も含め、改めて確認した。それで『日本国紀』について発信する際、折に触れて「監修」と称しているわけである。

 フェイスブックでは10月28日、ツイッターではその翌日、自分が監修させていただいた『日本国紀』が翌月12日の発売前からネット通販大手のアマゾンにおいて2週間連続でベストセラー1位であることを書いた。フェイスブックでは「いいね!」が500以上つき、多数のコメントと共にシェアも100を超えた。また、かなり久々にメッセージをくれる方もいた(笑)。