メイウェザーは、米経済誌フォーブスが毎年発表する「スポーツ長者番付」で何度も1位を獲得したが、その年の試合に限って、1年がかりで行われた巧妙な話題作りの後に実現したものばかりだ。

 一方、日本の「営業努力」といえば、前述の通り、テレビマンやプロモーターによるものがほとんどだ。米国では選手自身が稼ぐための言動をするわけで、エンターテインメント先進国との意識の違いは明らかだ。

 実は今回のRIZINには、堀口恭司vsダリオン・コールドウェル、浅倉カンナvs浜崎朱加というタイトルマッチ2試合が組まれている。それでも、メイウェザーのエキシビションがタイトル戦を差し置いてメーンになったのは、「客寄せパンダ」としてのスキルが群を抜いているからだ。

 格闘界のスターだった魔裟斗(まさと)の後継として期待の大きい那須川が、勝敗が付かないはずなのに「KOする」と宣言したのも、世界的な千両役者に追いつこうとするための「宣伝文句」にすぎない。

 では、RIZINと2年連続で一騎打ちとなったTBSのボクシング中継はどうだろう。今回、なぜマカオで世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級王座決定戦を行うのかといえば、引退届を提出した井岡が日本のボクシングライセンスを持たないためであり、いわば「抜け道」を用意した形だ。

 対戦相手のドニー・ニエテスも3階級制覇を果たしたフィリピンの英雄であり、4階級制覇が懸かるマッチメークとしては、以前よりもシリアスな展開が予想される。ただ、井岡はメイウェザーのようなセルフプロデュースができないから、試合内容で勝負という感じだ。

 マカオでの開催は、中継費用も日本より高くなるが、TBSは人気スポーツバラエティーの「SASUKE」に組み込む形でリスクを分散させた。いつ試合が始まるか分からない視聴者にチャンネルを合わせてもらうための「抱き合わせ商法」ともいえる。

 テレビショーでは視聴者という世間を相手にするため、主催者と番組サイドがあらゆる策を駆使するのは当然のことだ。だが、しょせん選手以外がやることであり、外側の演出にすぎない。やりすぎると茶番の印象も強くなる。

 確かに、主役である選手が黙って汗をかく姿は美しいのかもしれない。だが、苦境にある格闘界で大金を稼ぐには、やはりスターとしての振る舞いが求められる。
2018年11月、フォトセッションで握手を交わすフロイド・メイウェザー(左)と那須川天心=
2018年11月、フォトセッションで握手を交わすフロイド・メイウェザー(左)と那須川天心=
 あるテレビディレクターは「昔は『10分たって面白くなければチャンネルを変えられる』と言われたものですが、それが今は1分か2分」と言っている。試合中なら1ラウンド3分間に満たないわけで、その間に視聴者をつなぎ留めなければならないのだから、過酷な話であるのは確かだ。

 それでも、テレビ中継に出演している以上、選手は視聴者と観客の目を意識する必要がある。メディアの質問に「頑張ります」とだけ言って、試合を淡々とこなすだけでは、移り気なユーザーがこのマイナースポーツに興味など示すわけがないことを自覚すべきだ。

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