篠田博之(月刊『創』編集長)

 メディア批評が仕事の一つなので、もう30年近く、毎週、ほとんどの週刊誌に目を通している。週刊誌は、雑誌ジャーナリズムの代表であり、新聞やテレビと異なる立場から言論・報道の世界で大きな役割を果たしてきた。ところが、この数年ほど、手に取って思わずため息が出てしまうことが多い。

 スキャンダルと事件報道が週刊誌の基本だったはずなのだが、部数減に悩まされ、コスト削減の狙いもあって、大事件が起きても競って現場取材にしのぎを削るということが少なくなった。『週刊現代』『週刊ポスト』は以前から、そしてこの2年ほど『週刊朝日』も大きく舵を切って、「高齢者向け実用情報誌」とでも言うべき誌面になっている。年金、健康、医療といった実用情報が誌面の多くを占めるようになったのだ。

 各誌とも創刊からの長い歴史を経て、読者の高齢化が指摘されているのだが、そのコアな読者層に誌面をよりシフトさせることで、部数を安定させようという作戦だ。新しい読者を開拓するのでなく、手堅く守りに徹しようという方針だから、あまり明るい話でないのだが、そうせざるをえないほど追いつめられつつあるというのが実情だ。

 一つには、政治スキャンダルなどでスクープを放っても、それが部数増にはつながらなくなったという事情がある。2016年に「文春砲」と呼ばれるスクープを次々と放って部数を押し上げた『週刊文春』も、その後スクープ路線を続けているにもかかわらず、かなり部数を落としている。いまだに週刊誌界のトップではあるのだが、18年前半には予想以上に部数を落として業界で話題になった。

 逆に18年前半に部数を落とした『週刊現代』が後半少し持ち直したと言われるのは、高齢者向けシフトをより強めたからだ。昨年12月に入って反響が大きかった特集は「あなたの人世『最後の総力戦』」。いわゆる「終活」の話だ。第1弾で反響を得て、連続掲載しているのだが、これは高齢者向け雑誌の究極の特集と言える。

 18年前半は週刊誌各誌とも部数を落とす中で、唯一微増だったのは『週刊新潮』だが、これも何が要因だったかというと、6月頃にキャンペーンを張った「食べてはいけない国産食品」特集が実売を押し上げたのだ。同誌は事件報道と政治スキャンダルを得意としてきた週刊誌だから、何週にもわたって実用ものの特集を掲げたことは、業界で驚きをもって迎えられた。
苦境の週刊誌業界でしのぎを削る「週刊文春」と「週刊新潮」
苦境の週刊誌業界でしのぎを削る「週刊文春」と「週刊新潮」
 つまり、事件や政治スキャンダルよりも健康などの実用情報の方が部数につながるという傾向がますます加速しているのだ。これは週刊誌の読者構造によるものだろう。それでもニュースに力を入れる、と『週刊文春』は宣言しているし、『週刊新潮』も基本路線は変えていない。その結果、週刊誌界は、実用情報誌に大きくシフトしている雑誌と、従来の方針を続ける雑誌とに大きく二極分化しつつあると言える。