島村英紀(武蔵野学院大特任教授)

 平成時代は約30年続いたが、自然災害の多い時代だった。2018年の漢字は「災」に決まったが、近年では、地震や火山、気象災害が増えてきたのが目立つ。

 まず、地震について見てみよう。日本に起きる地震には二種類があり、一つは海溝型地震、もう一つは内陸直下型地震である。

 前者には2011年の東日本大震災を起こしたマグニチュード(M)9・0の東北地方太平洋沖地震や、これから起きるに違いない南海トラフ地震がある。後者には、1995年に起きた阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)がある。

 この二種類の地震は起きるメカニズムが違う。海溝型地震は、日本列島を載せているプレートに海洋プレートが衝突してくることで起きる。それゆえプレートが毎年4~8センチという速さで動いてくる分だけ、次第に地震を起こすエネルギーが溜まっていっている。そして、岩が我慢できる限界を超えたら、大地震が起きる。

 その意味では、毎年地震に近づいていることは確かなことだ。起きる場所は海溝近くに限定され、多くの場は太平洋岸の沖である。この地震はM8クラスか、もっと大きくなる。

 他方、内陸直下型地震は違う。これは日本列島を載せているプレートがねじれたり、歪(ゆが)んだりして起きるもので、どこに起きるのか、いつ起きるかは、今の学問では分からない。つまり、日本のどこにでも起きる可能性があるのである。

 しかも、間の悪いことに、内陸直下型地震は人間が住んでいるすぐ下で起きる。このため、地震の規模(M)の割に被害が大きくなる。M7・3の阪神・淡路大震災では6400人以上の犠牲者を出したし、2018年9月のM6・7の北海道地震や同6月のM6・1の大阪北部地震でも、大きな被害が生じた。
2011年4月27日、東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町で黙礼される天皇、皇后両陛下
2011年4月27日、東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町で黙礼される天皇、皇后両陛下
 政府の地震調査委員会が毎年発表している「全国地震動予測地図」がある。地震危険度を場所ごとに色分けしている。黄色がもっとも地震危険度の低い所、赤やえんじ色が地震危険度の高い所になる。南海トラフ地震が起きると影響の大きい西日本の太平洋岸や、首都圏地震が起きる可能性のある首都圏が、赤やえんじ色に塗られている。

 問題はこの種の地図が、一般には「安心情報」として受け取られてしまうことだ。つまり黄色の場所は「地震が起きない所」ではなくて、「起きるかどうか、今の学問では分からない所」なのである。