こうした宗教の衰退は、日本だけの現象ではない。欧州では、キリスト教の教会離れが深刻で、代わりに移民によってイスラム教徒が増加している。中南米は、カトリックの牙城だったはずだが、現在では、プロテスタントの福音派への改宗がかなり大規模な形で進んでいる。

 米国の福音派は、トランプ大統領の誕生に大きな役割を果たし、政治的にも強い力を持っている。だが、その米国でさえ、徐々にではあるが「無宗教」が拡大している。

 宗教の衰退には、情報環境の変化が大きく影響している。人工知能(AI)やスマートフォンは、救いを与える神や、人間関係のネットワークを与える宗教教団に代わる役割を果たすようになってきた。

 宗教の中で、信者が増え、社会的にも大きな力をもっているのは、キリスト教に次ぐ世界第2の宗教、イスラム教である。イスラム教徒によるテロが頻発したのも平成の時代の特徴である。世界に最も大きな衝撃を与えたのが、平成13年の米同時多発テロ、9・11だった。ただ、イラクとシリアにまたがる地域に勢力を拡大した「イスラム国(IS)」が力を失っていく中で、テロの脅威も薄れつつある。

 日本も、平成の終わりに差し掛かって、移民国家への転換が図られるようになり、これからはイスラム教徒という新たな隣人を迎え入れることになる。それが日本の宗教にどのような影響を与えるか、次の時代はそれが課題になってくる。
伊勢神宮を訪れる多くの参拝者がくぐる宇治橋前の大鳥居=伊勢市
 日本の場合、宗教の問題を考える際に、皇室の存在は無視できない。神社界の頂点には、皇祖神を祀る伊勢神宮が君臨している。

 次の時代の大きな課題として、皇位継承がクローズアップされるのは間違いない。皇位継承資格者の数は減り、皇室自体も将来における宮家の消滅という状況に立ち至っているからだ。皇室祭祀(さいし)の核心は、天皇が皇祖神を祀る役割を果たす先祖祭祀にある。先祖祭祀は、これまで日本人の宗教生活の基盤となってきた。

 先祖祭祀に代わる新たな信仰は生み出されていくのだろうか。それとも、信仰という基盤を持たないまま、日本人は国際化の波に翻弄(ほんろう)されていくのだろうか。平成の時代を通して明らかになった宗教を巡る課題に、私たちはこれから直面していかなければならないのである。