2017年のNCAAの収入は約10億ドルで、そのうち8億2100万ドルがアメリカンフットボールとバスケットボールのテレビ放映権収入である。これらの高いメディアバリューがNCAAの財源となり、最終的には学生たちに還元されている。

 では、「日本版NCAA」構想が進められているわが国の大学スポーツの現状はどうなのか。明らかにテレビ放映権ビジネスを期待できるスポーツイベントは箱根駅伝ぐらいであろうか。しかし、先述の通り「わが社もの」スポーツイベントのビジネスモデルではテレビ放映権の概念はなく、当然のことながら協会からの配分金もない。

 一般的には、わが国の体育会所属選手の多くは自ら部費を納めて活動しているため、経済的負担も大きい。加えて、学生の本業でもある授業もそこそこに、練習グラウンドに足を運ぶ。夜遅くまで及ぶ練習の疲れだろうか、翌日居眠りする体育会学生たちの授業態度は決して誇れるものではない。また平日開催の試合も日常的であり、各大学競技団体もこの状況を後押ししているかのようだ。したがって、一般学生との学力差は明白で、授業へのモチベーションもさらに低下する。

 その様子を熟知する在校生たちは、果たして彼らを心から応援することができるのか。テレビ越しに映る選手たちと現実との乖離(かいり)がなんとももどかしい。

 こうしてみると、学生の教育と競技支援に十分貢献できていないメディアスポーツが、弊害となっているのは明らかである。その姿は、長引く不況の影響で崩壊した企業スポーツともよく似ている。今こそ大学スポーツの根本的な改革が求められる。

 日本版NCAAも、正式名称が大学スポーツ協会、略称がUNIVAS(ユニバス)と決まり、「選手の安全確保」「学業との両立」「大学スポーツのブランド力向上」の3本柱を軸に、引き続き議論が進んでいるようだ。しかし、その議論を無視するかのように、テレビメディアと広告代理店はメディアスポーツ化を推し進めている。
テネシー大戦で攻め込むゴンザガ大の八村塁(左)=フェニックス(USA TODAY・ロイター=共同)
テネシー大戦で攻め込むゴンザガ大の八村塁(左)=フェニックス(USA TODAY・ロイター=共同)
 箱根駅伝ほどのイベントであれば、スポンサーシップ収入と2日間のCM提供料を合わせても、優に50億円を上回る計算になろう。極論を言えば、この収益的恩恵を大学スポーツに関わる全ての学生たちが受けることができるかが、ユニバス本来の業務ではないか。

 学生スポーツは単に勝敗だけの問題ではない。そのためにも、改めて大学スポーツ憲章といえる「ミッションステートメント」の確立と、メディアスポーツからの脱却に向けた各競技組織の自律が不可欠である。第100回記念大会がその節目となることに期待したい。