田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 2019年の日本経済は、昨年来の米中貿易戦争と、財務省が主導する消費増税という二つの大きなリスクを背負ったままの状態で迎えた。さらに最近では、韓国との政治的な対立が深まっている。

 まず、米中貿易戦争は単なる経済抗争ではない。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)やZTEに対する米国の制裁を見ても分かるように、それは国家の軍事的・政治的な安全保障にかかわるものである。

 最近のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の論説でも指摘されていたように、トランプ政権は自由貿易圏自体を否定しているとはいえない。むしろ民主主義的価値観を共有し、さらに安全保障上の利害を同じくする諸国(日本や欧州)とは協調的に貿易交渉を進める一方で、中国とは敵対的な政治・経済圏を構築しようという意欲が伺える。

 もちろん、この二つに分かれた経済圏は厳密なものではない。米中貿易戦争自体、その推移はさまざまな不確実性に満ちているので、断定は禁物であろう。

 例えば、日本や欧州が完全に米国中心の経済圏に属しているとはまだいえない。米ソ冷戦時のように社会主義経済圏と資本主義経済圏が一定のレベルで対立し、互いの経済的交流を閉じているわけではない。実際に、米国と中国の貿易取引でさえも依然、拡大基調にあるといっていい。
共同記者発表で握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2017年11月、北京の人民大会堂(共同)
共同記者発表で握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2017年11月、北京の人民大会堂(共同)
 ただし、イェール大の浜田宏一名誉教授が最近の論説「Who Benefits from Trump’s Trade War?(トランプの貿易戦争で利益を得るのは誰か?)」で指摘したように、米国と中国の現在の関係を一種の関税同盟の枠組みで捉えた方が分かりやすいのも事実である。ここでいう関税同盟とは、同盟に入っている国々だけに特定の関税ルールを課すものである。

 通例は、関税の引き下げ措置を共通のルールとして設定する。つまり、関税同盟内では、同盟に属していない国々に比べて、貿易上の恩恵を受ける。この関税同盟に属することの利益を「貿易創出効果」という。