つまり、韓国の歴代政権が「愛用」してきた日本を利用した「謝罪ゲーム」を行っているのだろう。韓国の国内向けの人気取りか、あるいは韓国世論の目をそらす役割を果たしている。

 今のところ、日韓はゲーム理論でいうところの「しっぺ返し戦略」になっている。防衛協力を韓国が破ったことで、日本側がしっぺ返しをし、それに対して韓国が応酬し、さらに日本が…という展開だ。

 おそらく韓国の政府、マスコミ、野党、そして識者(これには日本の一部の識者も含まれる)はレーダー照射問題についても、徴用工問題などと同じように、無限に「謝罪」を要求してくるだろう。もちろん、日本にとっては「裏切り」が無限に繰り返されるゲームとなる。

 この場合、日本が取るべき戦略は、相手が裏切りを続ける限り、こちらも「報復」をし続けるというものだ。確かに、長期的には日韓の防衛上の利害を損ねるかもしれない。この損失を重く見れば見るほど、両者はやがて「暗黙の協調」に移行する。たとえ今回のレーダー照射問題で、当事者間で白黒がつかなくてもだ。分かりやすくいえば、「あのレーダー照射問題のけりはついてないが、このまま争いを続けると両者とも損が重くなるので、他の防衛面では協力を続けようか」という姿勢になる。

 だが、文政権が国内の人気取りを優先して、日韓の防衛協力の長期的な損失を重視しないときには、両国の暗黙の協調は以後も達成できない。

 もちろん、他方で日韓の経済的取引は拡大基調であり、観光客など人的交流も盛んだ。ただし、米中貿易戦争が、民主主義的価値観と安全保障の対立を今後も先鋭化させていけば、やがて韓国の外交姿勢は転換を迫られる可能性はある。
2018年11月、G20首脳会合の記念撮影に臨む(左から)安倍首相、アルゼンチンのマクリ大統領、韓国の文在寅大統領、中国の習近平国家主席(共同)
2018年11月、G20首脳会合の記念撮影に臨む(左から)安倍首相、アルゼンチンのマクリ大統領、韓国の文在寅大統領、中国の習近平国家主席(共同)
 北朝鮮は経済や安全保障、そして政治的価値観において中国政府に極めて近い。つまり、北朝鮮は中国中心の「関税同盟」のメンバーといえる。

 この状況下で、日韓が防衛の面で十分な協調が取れないことは、韓国が米国中心の「関税同盟」メンバーに不適格とされる可能性が高まるだろう。レーダー照射問題は米中貿易戦争の動向の中で、日本と韓国がどう進むかを見るいい試験紙になるのである。