藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表理事)

 衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)の新春セールが史上最速で取扱高100億円を突破したとして前澤友作社長が私財から100人に100万円ずつ総額1億円を配る「お年玉」企画をツイッター上で行い、話題をさらった。

 企業拡大の一方で低賃金労働者を利用し、貧困や生活困窮を生み出しておきながら、このような「お年玉企画」で人々に夢を見させて、夢を語らせ、成金経営者の承認欲求や満足のために利用する姿は見るに堪えない下品さがある。

 私は昨年、コミュニケーションデザイン室長、田端信太郎氏とAbemaTVやツイッターなどで議論を続けてきた。さらに前澤社長ともツイッターでやり取りを行い、彼らの欺瞞(ぎまん)性を指摘し続けてきた。なぜなら、同社は社員が働きやすい企業、従業員が楽しく働ける企業であるという「ウソ」を喧伝(けんでん)してきているためだ。

 近年、東証に上場する企業、急成長する企業は、派遣労働者、非正規雇用を大量に利用して利益をあげてきた。彼らの富の源泉は、低賃金労働者への労働力搾取に起因している。その成長や利益の背後には、大量の派遣労働者が存在している。彼らの言う社員や従業員のなかに派遣労働者は含まれていないばかりか、正社員との待遇差別も著しい。

 派遣や非正規は好きでやっているのではないか、という意見もあるが、「不本意非正規の状況」(厚生労働省)によれば、正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(不本意非正規)の割合は、非正規雇用労働者全体の14・3%(平成29年平均)である。相変わらず、不本意非正規の数も多い。
記者発表会でプレゼンテーションするスタートトゥデイの前沢友作社長=2018年7月3日、東京都港区
記者発表会でプレゼンテーションするスタートトゥデイの前澤友作社長=2018年7月3日、東京都港区
 これは大きな問題である。日本の相対的貧困率は15・7%(平成27年)と主要先進国の中でも高い。日本は貧困に苦しむ国民が多い国である。なかでも働く労働者の貧困であるワーキングプアは大きな社会問題となっている。

 子供の貧困も働く親の所得の低さに原因があり、その背景にはワーキングプア問題がある。特にシングルマザーの貧困は、先進諸国最悪の相対的貧困率を記録するほど深刻であり、女性のひとり親の多くが非正規雇用で働いている。

 ZOZOの倉庫作業などを担う派遣労働者のなかにも、生活苦を抱える人々が含まれていることは容易に想像できることだ。要するに、ZOZOの利益の源泉は、大量の派遣労働者や非正規雇用を抱え、ワーキングプア問題と不可分であり、多くの犠牲を強いながら生み出されたものなのだ。