以前指摘したように、韓国軍への指揮統制権は大統領の管轄下にあり、勝手な「攻撃」は絶対にできない。韓国の大統領はクーデターを最も警戒しており、各師団や部隊の司令官の指揮と行動は厳しく監視されてきたからだ。もし、下級兵士が勝手にしたのなら、韓国軍の組織崩壊を意味する「クーデター行為」にあたる。あくまで、誰かにレーダー照射が命じられたから実行したのだ。

 では、韓国駆逐艦は海自哨戒機に見られると困る作戦行動をしていたのか。哨戒機の飛来は、直ちに海軍本部から国防省に連絡されたのであろう。この報告に対して、国防省から「追い払え」との指令が来たのではないか。追い払う方法がないので、レーダーを照射したのか。

 なぜ追い払う必要があったのか。報道官声明では「通常の作戦活動中」「遭難漁船を救助した」と説明したが、いつの間にか当初の遭難漁船の「北朝鮮」という表現が消えた。海軍艦艇の「作戦活動」には、北朝鮮漁船を救助する「任務」はない。北朝鮮は「敵国」であり、漁船に「敵兵」が乗っているかもしれないからだ。

 とすると、北朝鮮漁船の救助活動を「発見」され、「まずい」と考えたのか。昨年末公開された自衛隊機の撮影映像を見ると、韓国海洋警察の救助艇が近くにおり、既に救助活動は終了していた。百歩譲って、韓国側の主張をその通り受け止めるのであれば、駆逐艦は自衛隊機の位置と距離を測るためにレーダーを作動させたが、間違えて「火器管制」レーダーを使ったのかもしれない。

 それなら「誤作動」と言えばいいのだが、大統領府が「支持率アップ作戦」を展開したために、事態が混乱してしまった。この韓国の政治状況がわからなければ、韓国海軍が北朝鮮船舶の「密輸取引」や石油の「瀬取り」作業を「保護」していたのではないか、との観測が生まれるわけだ。

 日本は韓国の「問題すり替え」や「ウソ」の手口に乗らずに、冷静に対応する必要がある。それには、「文大統領の支持率は近い将来に30%台に落ちる」との冷静な見通しを持ち、決して大統領府の「支持率アップ作戦」に協力してはいけない。日韓関係の悪化で、経済的にも外交的にも困るのは文政権だからだ。
2018年12月29日、レーダー照射問題を巡る防衛省の動画公開などについて報じる韓国各紙(共同)
2018年12月29日、レーダー照射問題を巡る防衛省の動画公開などについて報じる韓国各紙(共同)
 韓国の新聞や世論の多くが、韓国政府発表に疑問を抱いているリアリティーを理解すべきだ。「日本は正直だ」との韓国世論の意識を悪化させてはならない。

 むしろ、日本政府は文政権と韓国民の「乖離(かいり)戦略」を取るべきだ。事実確認と再発防止の要求に徹して批判や非難の表現は避ける、慌てて「早期のうやむや解決」を取らない、このスタンスが肝要だ。過去の「その場しのぎ外交」が、結局日韓関係を悪化させた教訓に学んでほしい。