金委員長が捜索を依頼しなければならないほど、重要な任務を帯びた、しかも漁船に似た船は北朝鮮の工作船しかない。そもそも日本に漂着した北朝鮮の漁船は粗末な木造で無線機器なども装備していないので遭難しても連絡の手段がない。

 だが、この北朝鮮船は救難信号を出すことなしに北朝鮮本国に遭難の事実を伝達しているわけだ。秘匿装置のついた特殊な通信機を装備していたに違いなく、そのような装置を装備しているのは北朝鮮では秘密警察の「国家保衛省」(旧国家保衛部)に所属する工作船だけだ。

 つまり、北朝鮮の漁船に偽装した工作船が、能登半島沖でエンジン故障を起こして漂流し、日本に漂着して発覚するのを恐れた金委員長が文大統領に捜索を依頼したのである。

 では、工作船は能登半島沖で何をしようとしていたのであろうか。北朝鮮による洋上密輸取引「瀬取り」をしていた可能性は既に指摘されている。しかし、現場は日本のEEZであり、しかも能登半島沖は自衛隊のレーダー覆域である。海上自衛隊は公海上でさえ北朝鮮の瀬取りを撮影している。

 そんなリスクの大きな海域で北朝鮮があえて瀬取りをするとは考えられない。能登半島沖は、過去に幾度も工作船が確認されており、日本への格好の侵入路である。

 つまり、金委員長は日本に工作船を侵入させようとしたが、遭難し秘密裏に救助を韓国に依頼したのだ。通常の救難活動であれば警備救難艦だけで十分だが、能登半島沖の日本のEEZで活動していれば、日本のP1哨戒機が飛んで来るのは目に見えている。
2015年10月、海上自衛隊観艦式に参加した韓国海軍の艦船=神奈川県沖の相模湾(酒巻俊介撮影)
2015年10月、海上自衛隊観艦式に参加した韓国海軍の艦船=神奈川県沖の相模湾(酒巻俊介撮影)
 そこで韓国海軍の駆逐艦が警備救難艦に付き添い、日本のP1哨戒機に射撃用レーダーを照射して追い払ったわけだ。韓国は本来、日米と軍事協力体制を構築しており、日米韓は相互に情報を提供し合わなければならないはずだが、韓国はそれをしないばかりか、北朝鮮の敵対行動に協力したことになる。

 今回の問題で、日米韓の軍事協力体制は崩壊したといっていい。文大統領が辞任しなければ遠からず日韓関係も米韓同盟も終焉(しゅうえん)を迎えることになろう。