2019年01月10日 15:10 公開

マーク・ダーシーBBC英議会担当編集委員

ドーン! 首相代表質問は実に退屈で、新しい発見はほとんど何もなかったが、英下院はその後に騒然となった。ジョン・バーコウ議長が、再開された「意味のある投票」審議について規則変更を求める動議の検討を認めたからだ。「意味のある投票」とは、イギリスのブレグジット(欧州連合離脱)協定に対する下院採決で、15日に予定されている。

審議規則の修正は、単なる手続き上の問題に留まらない。元法務長官のドミニク・グリーヴ議員(保守党)が提出した修正案が成立すれば、テリーザ・メイ首相がまとめた離脱協定を議会が15日に否決した場合、政府は21日以内ではなく3日以内に、合意なしブレグジットが国に与える影響を議会に報告しなくてはならない。

従来の審議規則では、離脱協定が否定されても合意なしブレグジットについての議会審議は2月に持ち越されるところだった。一方でブレグジットの期限は3月29日。時計は容赦なく時を刻んでいる。

グリーヴ修正案は可決された。その結果、もし首相が来週敗れた場合、下院はあらゆる代替策を検討できることになる。「管理つき合意なし」ブレグジット、2度目の国民投票、「ノルウェー方式」、もしくは現行の離脱協定の議論再開など、選択肢はいくつかある。

いずれかの策が下院の過半数を得てもそこに法的拘束力はないが、少なくともどの方策が議会の支持を得ているのかは判然とする。

端的に言って、これは下院議長によるとてつもない決断だ。下院事務総長のサー・デイヴィッド・ナツラーは反対していたという。

万能の前例?

議事手続きの何がどう、閣僚にしか修正できないのかといった細かい議会規則にあまり深く立ち入るつもりはない。しかし、議長のこの決定は通常の慣習をひっくり返すもので、ブレグジットの行方にとてつもない影響を与える。

この決定によって、物事の決定はどんどん早く決まっていくし、首相とは別の方向性をもくろむ勢力はこれまでより身動きがとりやすくなる。

加えて今回の決定が万能の前例となり、議事進行の決定権を下院議員が大きく握るようになるかもしれない。ブレグジットに限らずあらゆる問題について。

もしこれが前例として定着するなら、下院の議会運営は政府が決められるものという慣習が覆され、将来的にどの内閣にとっても大きな打撃となる。

バーコウ議長はこれほど重大な決定を今まで下したことがないし、今後もおそらくないだろう。2013年に女王の施政方針演説への修正追加を認めた時より、今回の方が影響ははるかに大きい。2013年の施政方針演説修正は、それを機にEU離脱の是非を問う国民投票の実施が下院で審議されることになり、やがて保守党の正式方針となったのだが。

下院では9日、議事手続きへの異議が1時間近く相次いだものの、バーコウ議長はこの難局は乗り切った。前任者のマイケル・マーティン議長のように議長を交代させられなかったこと自体、ある種の勝利だった。しかし、このままでは済まない。

第一に、議長に対する不信任決議案の提出はおそらく確実だ。下院議事録の「未決事項」に記載されるだけで終わるかもしれないが、場合によっては、激怒する保守党議員たちが必要な票数を集めるかもしれない。

加えて、保守党議員だったバーコウ議長は今や労働党寄りだと、複数の保守党議員が表立って批判している。かつては考えられないことだったが、今では毎日のように議長の偏向批判が繰り返されており、今後はさらに増えるかもしれない。

議長に集中砲火か

議長の議会運営全般が、今後は批判対象になりかねない。急な質問や緊急の議論、首相代表質問の延長があまりに多いと。

下院本会議場はこれから、非常にいごこちの悪い場所になるだろう。

しかも何より、バーコウ議長本人のパワハラ疑惑もある。同僚を威圧しいじめたという告発を、議長は繰り返し否定してきたが、事実関係の調査は続いている。

パワハラ疑惑調査は議長を守るために延期されてはならないし、議長を破滅させる武器として利用されてもならない。しかしその可能性はある。

どうなるにせよ、バーコウ氏の下院議長としての怒涛(どとう)の任期は、そろそろ終わりに近づいていると私は思う。

数週間ではなく数カ月のことかもしれないし、ブレグジットの重大採決の後に(その間、今回のような決定がまた必要になる可能性もあり得ないわけではない)。

時期はいつになるにせよ、後任議長は基本的なことを決めなくてはならない。バーコウ議長は下院の議会運営に革命をもたらしたが、これをなかったことにするならどこまでか。そして、この大変化を留めるのなら、どこまでか。

(英語記事 Bercow's unprecedented ruling could change the course of Brexit