2019年01月11日 10:56 公開

日本の安倍晋三首相は10日午後、ロンドンでテリーザ・メイ英首相と会談した後、イギリスの欧州連合(EU)離脱について、合意なし離脱の回避を「世界が期待している」と共同記者会見で述べた。

メイ首相がEUとまとめたイギリスのEU離脱(ブレグジット)協定は、実施には英議会の承認が必要。いったん延期された下院採決は15日に行われる予定だが、与野党内の反対は根強く、否決の見通しが高まっている。

安倍首相はダウニング街の英首相官邸でメイ氏と会談した後、共同記者会見に臨み、メイ首相の離脱協定を「日本は全面的に支持する」と明言した。メイ氏の協定はイギリスに投資する企業に法的安定を確保するものだと評価し、それだけに「『合意なき離脱』は回避して欲しいと世界が期待している」と強調した。

両首相は、ブレグジット後には現在の日本とEUの通商協定をもとに、日英間であらためて「野心的な2国間協定」を実現すると共に約束。安倍氏は、強力な日英関係を発展させ、対英投資を促進し、共に経済成長を実現していく強い意向を示した。

メイ首相は、EU離脱が各国との関係を強化する「またとない機会」になると述べ、下院議員にはあらためて15日の採決で離脱協定を支持するよう呼びかけた。

「合意なし(ブレグジット)を避けるには、合意を結び、それを承認するしかない。そしてその合意とは、目の前にある協定のことだ。EUはこの協定しか認めないと態度を明確にしている」とメイ氏は述べ、ブレグジット後は「欧州連合とイギリスの間の、今まで以上に野心的な貿易協定が可能になる」ほか、「日本などの世界各国と、我々は独自に良い貿易協定を結べるようになる」と、離脱の意義を強調した。

<関連記事>

日英の貿易高は昨年280億ポンドに達し、日本企業はイギリス国内で約15万人を雇用している。

両首相は首脳会談で、ブレグジットや貿易のほかに、認知症や心臓疾患の共同研究、ビッグデータや人工知能(AI)の活用拡大、環境に優しい持続可能な成長などを話し合った。さらに、イギリスは英海軍艦HMSモントローズを日本に派遣し、北朝鮮による制裁違反活動を監視することも決めた。

両国の文化交流の一環として、英ナショナル・ギャラリーがゴッホの「ひまわり」を含む所蔵美術品を日本に送り、大規模な展覧会を開くことも決まった。

一方でホンダはこの日、3月29日に予定されるブレグジットによる混乱に備え、英南部にあるスウィンドン工場での生産を4月に6日間休む計画を明らかにした。ホンダは「物流や国境での検査など、離脱後に起こりうるあらゆる混乱にどう備えるべきか検討してきた」と説明している。

EUとの合意が施行されない状態での合意なしブレグジットとなった場合、イギリスは世界貿易機関(WTO)の規則に沿ってEUと貿易し始めることになる。

離脱協定では、イギリス国内のEU加盟国市民やEU圏でのイギリス国民の在住権など、英・EU関係の従来の取り決めが20カ月は継続する移行期間が用意されているが、合意なしとなった場合は、その適用もなくなる。

離脱協定に対して与党・保守党からも約110人の造反が予想され、否決の見通しが高まる中、メイ首相は最大野党・労働党の議員や労組代表の説得に力を入れているが、労働党も離脱協定に反対する方針。

労働党のジェレミー・コービン党首は、下院が離脱協定を否決した場合は「可能な限り早く」総選挙を実施すべきだと主張し、「政策の下院通過を実現できない政府は、もはや政府ではない」と批判した。

ただし、メイ政権は労働党議員の支持を取り付けるため、労働者の権利や環境保護の強化を盛り込んだ労働党の離脱派議員による協定修正案を検討しているとも言われている。

(英語記事 Brexit: Japan's PM says 'wish of whole world' to avoid no-deal