
2019年01月16日 13:00 公開
ローラ・クンスバーグBBC政治編集長
票読みは危険な遊びだ。今日の下院採決にいたる全てを事細かく追いかけてきた、1人のベテラン政治家は、テリーザ・メイ首相が下院に提出いsた協定は90票差で否決されると予想していた。
200票差で負けるなどという、極端な予想も広まっていた。
しかし、政府が必要な票数を獲得すると思っていた人は、ウェストミンスター(イギリス議会)にはいなかったはずだ。
だからこそ、様々な予測が飛び交う中で頭がおかしくなりそうだったが、今日議会でささやかれていたのは採決そのものがどうなるかではなかった。採決の次に何がどうなるのかを、誰もが気にしていた。
「意味ある投票」と呼ばれた今回の採決は、文字通りさまざまな意味を持つだろう。
しかし、採決後に首相がどうするつもりなのかは、前よりはっきりした。
そして驚くなかれ、メイ首相が21日に提出予定の代替案は、元々の離脱協定を微調整したものになるだろう。
この数週間、複数の閣僚が内々に、メイ首相はおそらく自分がまとめた妥協案を留めようとするはずだと話していた。
離脱協定はイギリス政府だけが作ったものではない。EUとまとめた協定で、ほとんどの主要経済団体が支持する、2年以上の努力の賜物だ。
通常ならば、下院での決定的な敗北はその法案の終わりを意味する。
しかし首相官邸がこの協定を手放すつもりはなさそうだ。
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アンドレア・レッドソム下院院内総務はBBCに対し、歩み寄りをすべきはEUの方だと話した(現実的かはともかく)。ジェフリー・コックス法務長官は下院で議員に対し、協定はほとんど変わらない形で再提出されると告げた。政府幹部2人が、似たようなことを言っている。
つまり、いくら敗北が決定的なものだったとしても、メイ首相には劇的な方針転換を期待できない。
メイ首相に方針転換を迫る内閣も、議会を猟奇的な祭り(タイタニック号の模型やアイルランドの妖精、数え切れないほどのユニオンジャックとEU旗で彩られていた)の場に変えた与野党の協定反対派も、首相に今すぐ方針転換させるのは難しそうだ。
内閣の中では、アイルランドと英・北アイルランドの国境をめぐるバックストップ(防御策)に対するサンセット条項(適用期限を定めた条項)を含めた代替案の議会承認を来週中に獲得し、それをEUに提示するしか道がないという意見も出ている。
メイ首相が心変わりするなら、それは初めてのことではない。
しかし、私は今日の劇的な展開が大きな転換点になるとは思っていない。
では、今回の採決は一体なんだったのか? そう聞きたくなるのも無理はない。
議会の意向を話し合うだけでなく、実際に議会はどうしたいのか、どこかの時点で確認する必要があった。
政府内には、今日の協定否決で不満を吐き出した議員たちが、いずれ協定を支持するだろうと期待する人たちもいる。
しかし、それははかない望みかもしれない。
今日の採決は、ばんそうこうをはがすようなものだと例えた下院議員もいる。いくらそろそろとゆっくりはがしても、痛みが減るわけではないし、ばんそうこうの下でどれだけ傷が治っていたかは、はがしてみないと分からないのだ。