実際には、ゴーン逮捕の数カ月前から竹田氏の事情聴取の日程が決まっていたので、「意趣返し」というのは間違っているという報道もある。しかし、フランスの新聞が捜査状況を報道した1月11日というタイミングに何か裏があるように感じる。捜査の進展具合をマスコミにいつ発表、あるいはリークするかを決めるのは司法当局の裁量だからである。

 ゴーン逮捕劇の「副産物」は、欧米先進国から見た日本の司法制度の「異質性」に国際的焦点が当たったことである。長期の勾留、取り調べに弁護士が同席できないことなどが挙げられる。

 これまで、わが国では司法だけは聖域で、いかなる批判も許されないという空気が強かった。だが、こうして海外からの批判に晒(さら)されると、国民の間に制度の見直しを検討してもよいという意見が強まる可能性がある。そして、それは悪いことではない。

 ゴーン被告の家族からも、検察の「非人道的な」取り扱いに批判の声が上がっている。

 1月8日の勾留理由開示手続きにゴーン被告が出廷する前に、息子のアンソニー・ゴーン氏は、1月6日のフランスの日曜紙ジュルナル・デュ・ディマンシュのインタビューで「愛する人が世間から完全に隔絶され、そこから出る条件が自白しかないとすれば、悪夢を終わらせる方法を見つけたいと思うだろう」と述べた。これは、長期勾留を可能にし、それをてこにして自白に追い込む日本の司法制度に対する痛烈な批判である。

 また、妻のキャロル・ゴーン氏は、夫が日本の拘置所で「過酷な扱い」を受けていると、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチに書簡を提出して訴えた。その中で彼女は、長期勾留によって自白を引き出そうとする手法や弁護士の立ち会いが認められない取り調べについて言及し、「夫のような扱いは誰も受けるべきではない。日本のような先進国ではなおさらだ」と主張している。また、同団体も、ゴーン逮捕劇のおかげで長年看過されてきた日本の「人質司法(hostage justice)」制度に世界の注目が集まるようになったと指摘している。

 このように日本の司法制度に対する国際的批判が強まっている中で、竹田氏がフランス当局の捜査対象となったのである。単純な比較はできないが、ゴーン被告は長期勾留され、竹田氏は勾留されないままフランス当局に事情聴取されている。日仏の司法制度の相違が見事に浮かび上がったという他はない。

 15日、東京地裁はゴーン被告の保釈を認めない決定をした。証拠隠滅の恐れがあると判断したようである。保釈請求が却下されたことで、あと少なくとも2カ月間は勾留が続くとみられ、この勾留の長期化は、世界から批判を浴びそうである。東京地裁は、保釈を認めなかった理由をきちんと世界に説明しなければならない。
カルロス・ゴーン日産前会長(中央)の保釈請求を認めなかった東京地裁(左)と、東京地検特捜部の入る法務・検察合同庁舎(右)
カルロス・ゴーン日産前会長(中央)の保釈請求を認めなかった東京地裁(左)と、東京地検特捜部の入る法務・検察合同庁舎(右)
 これまでも、日本の司法は対外的に十分な発信をしてこなかった。しかし、ゴーン被告の逮捕によって、世界から日本の司法制度が注目されるようになってしまった。国内向けには「聖域」として批判を排除できたかもしれないが、もはや国際的にそれが可能な時代は去ったと言ってよい。

 日本が日本流の司法を貫くように、フランスもフランス流の司法を貫く。フランスの刑法に従えば、公務員でなくても竹田氏とディアク前会長の間で贈収賄罪が成立する可能性がある。今後の展開は予断を許さない。

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