「番付のうえで近いのは大関の高安だが、彼はなれないと思う。カチ上げ気味の立ち合いと安定感のない引き技という、すっきりしない取り口が気に入らないので、横綱になってほしくないだけなんだけど(笑い)」

 高橋氏は、横綱には“魅力的な個性”があってほしいと力を込める。

「貴景勝はハッキリ言って、体形も相撲も不細工です。モテそうになくて、僕は『ウシガエル貴景勝』と呼んでいる。ウシガエルは何でも食ってしまう悪役なんですよ。あのふてぶてしさがいいじゃないですか。貴景勝にはかつての北の湖のような、憎たらしいほど強い横綱になれる“見た目の素質”がある」

 だが、気懸かりな点もある。実は、昨年1月の入幕以来、「寄り切り」で勝ったことが一度もないのだ。

 力士の取り口には大きく「突き押し相撲」と「四つ相撲」の2タイプがあるが、綱を張るには「四つに組んで勝てる力士」であるべき──これは、貴景勝の師匠にして平成の大横綱と呼ばれた貴乃花の“教え”だ。

「2016年に豪栄道が全勝で初優勝した秋場所後の巡業中、当時の巡業部長だった貴乃花親方が豪栄道に『突き押しはもういい。これだけ力がついたのだから、これからは四つ相撲の稽古をした方がいい』とアドバイスしていた」(前出・ベテラン記者)

 突き押しが得意の力士であっても、綱を狙うなら「相手にまわしを与えても勝てる取り口」が必要という考え方だ。元師匠の教えを実践できるかが、貴景勝の今後の課題だろう。

大卒力士はダメ!

 九州場所で土俵を沸かせた若手力士の面々を見ると、貴景勝のほかにも阿炎、大栄翔、北勝富士(前頭1)、阿武咲(前頭13)など、突き押しを得意とする力士が多い。

 幕内で四つに組んでも強さを見せる日本人力士というと正代(前頭4)、朝乃山(前頭5)、遠藤(前頭12)などがいるが、「“横綱になれない”というジンクスのある大学出身力士ばかり」(協会関係者)で、期待感はあまり高くない。

 そうしたなか、「阿武咲を“次期横綱候補”に推したい」と力説するのは、やはり好角家である漫画家のやくみつる氏だ。

「同じ1996年生まれの貴景勝とは小学校時代からのライバルですが、取り口の幅では阿武咲のほうが上。今は突き押しが最大の武器ですが、阿武咲は器用なので組んでも安定感が出てくるでしょう。

 ただ、横綱になるにはあと3年くらいはかかるように思います。その頃には、昭和の大横綱・大鵬の孫である三段目の納谷や埼玉栄高でその同級生だった琴手計が出てくるのではと注視していますが、まだ真価はわからない」

 さらに、貴景勝、阿武咲の2人のライバル関係に割って入りそうな“もう一人の同級生”の存在もある。

「秋場所で幕下優勝を果たした極芯道(十両13)です。同級生2人へのライバル心は強く“出遅れを取り戻したい”と公言している。角界では、阿炎、朝乃山、輝(前頭6)、矢後(十両1)、炎鵬(十両10)ら『1994年生まれ』と、貴景勝ら『1996年生まれ』のどちらが次代の頂点を極める黄金世代になるか、密かに関心を集めているのです」(若手親方)

 強い日本人横綱の登場を、多くの相撲ファンが待っている。

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