鈴木涼美(社会学者)

 『週刊SPA!』というのは不思議な雑誌で、いかにもサブカル系だったり、アラサー女性に人気だったりする漫画の連載があるかと思えば、「あなたのおっぱい見せてください」みたいな写真特集が突如出てくる。さらに、手を替え品を替えセックスと収入とか、セックスと学歴とか、セックスと場所とかの相関関係をひも解く記事が結構なページを割(さ)き、貧困や老後などに関する特集も多い。

 基本的には若手〜中年の男性をターゲットにしているわけだが、カルチャーに関してはかなり高度に文化系でもある。大衆とアングラ、下世話とブンカが混在していて、私としてはそこが面白いのだけど、当然熱心に読んでいるページによって雑誌のイメージは違うだろうし、おそらく作り手側の持っている雑誌アイデンティティーと一般的な読者の印象にも齟齬(そご)がある。

 私自身も連載を持っているし、そのほかでも何かと付き合いがあるので、編集者を何人も知っているのだけど、いかにも文学少女っぽい人がいたり、サブカル男子っぽい人がいたり、フェミニズムにこだわる男性がいたり、チャラそうなおじさんがいたりと多様で、文学少女がおっぱい特集なんかを手伝っている、割と面白い光景が見られることもある。

 新年早々、その『週刊SPA!』が女子大生とのギャラ飲み特集という割と「お家芸」っぽい記事について世間から大変厳しい追及を受けている。

 中心となっているのは海外経験豊富そうな現役大学生の女性で、ワイドショーなども相次いで彼女にインタビューしたり、記事を紹介したりと大ごとだ。編集部も早々に謝罪した。狭い村のような無法が許されているアングラ誌であったら、運動家の大学生の目にもネット住民やコメンテーターたちの目にもそれほど入らなかったかもしれない。少なくとも、「下品な週刊誌がまたバカなことをやっているけど、この雑誌はこういうもんだからしょうがない」というような見逃しは、『週刊SPA!』クラスの雑誌にはもう許されないということがよく分かった。

 若者の雑誌離れが顕著なのは事実で、週刊誌を見慣れている大人からすれば見飽きてしまってスルーしてしまう類(たぐ)いのものでも、普段こういった雑誌に触れることがない学生が見れば、その見出しや内容は余計に前時代的かつショッキングに思えるという温度差も大きいだろう。

 今回の炎上について、当初は米国かぶれの学生による自己実現に似た運動と思って冷笑的に見ていた人も多かろう。たとえきっかけがそういったものであったとしても、テレビなどで取り上げられる時に示されるのは「なるほど、これは問題だ」「もう、こういう時代じゃない」という反応であって、一向に雑誌擁護の声は聞こえないことを思うと、そう簡単に片付けてしまえる話でもない。
『週刊SPA!』が掲載した「ヤレる女子大学生RANKING」=一部画像処理しています
『週刊SPA!』が掲載した「ヤレる女子大学生RANKING」=一部画像処理しています
 大衆の言葉が必ずしも正しいとは思わないが、時代の空気というものを無視して生きることはできないし、空気の読み間違えや危機感のなさは罪となり得る場合もあることを思えば、こうした声を無視することは危険である。

 さて、問題となっているのは、『週刊SPA!』が特集した「ヤレるギャラ飲み」の中で、「ヤレる女子大学生RANKING」として実践女子大や大妻女子大などの具体名を挙げて独自のランキングを作成したことであり、騒動の発端となったのは署名サイト「change.org」内の呼びかけである。彼女たちやそれに賛同する人たちは、一体何に怒っているのだろうか。そしてその怒りは妥当なのだろうか。