杉山崇(神奈川大人間科学部教授)

 アイドルグループ、NGT48メンバーの山口真帆さんに対する暴行事件が話題になっています。当然、山口さんはとても怖い思いをされたわけですが、問題はこれだけではありません。山口さんを守るはずの運営側が、彼女をさらに傷つけるような対応を重ねたため、大きな批判を集めているからです。

 報道を見る限り、山口さんは大切にしてきたはずのグループの仲間も、運営側にも疑念を深めているのではないでしょうか。こうなると、山口さんが二重、三重の精神的な被害を受けているのではないかと心配になってしまいます。謎と闇の深い今回の事件自体についても追及する必要がありますが、ここでは、事件後に運営側が取った行動の何が問題だったか、心理学の視点から考えてみましょう。

 まず、事件の経緯を振り返りながら、運営側の対応への疑問を整理しましょう。事件が明らかになったのは、山口さん自身による動画配信サービスでの告発でした。

 事件からちょうど1カ月後に行われた配信で、山口さんは「何事もなかったかのように片付けられる」「モバメ(モバイルメール:メンバーからファンにメール配信されるサービス)も止められて送れない」と発言したそうです。彼女が告発しなかったら、この件は闇に葬られていた可能性もあったのかもしれません。既にこの時点で、運営側が被害者である山口さんを守る姿勢に疑いが見えてきます。

 また、山口さんのツイッターではメンバーが事件に加担していたことも示唆されていました。運営側にはメンバーの行動を管理・監督する責任があります。

 メンバーが関与していた疑いが少しでもあるのであれば、まずは運営側が責任を持って情報を統括しなければなりません。そして、メンバーが関与を疑われる事態になったことそのものを反省し、山口さんのケアを含めてマスコミにも適切な対応を取るべきでした。

 しかし、結局告発に至ったように被害者である山口さんとの信頼関係も十分に築くことができなかったようです。反省の態度も示されていないように映るわけで、既に責任追及は避けられない事態に陥っていたといえるでしょう。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 この「告発」の反響は大きく、日本では全国ニュースでも報じられました。また、米国や英国、フランスなど海外のメディアも「日本のポップスター」の事件として注目し、世界中が真相を求める状況が作られつつありました。事件はファンの間だけでなく、一般の人たちにも話題になり、臆測が臆測を呼ぶようにもなりました。

 その中で、山口さんが公演中に突然の謝罪を行いました。それも、他のメンバーも運営側もいないステージにただ一人で立ちながら、何の真相への言及もないままに、「世間を騒がせた」と頭を下げたのです。