平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家)

 NGT48の山口真帆が昨年12月、ファンの男2人に暴行を受けた事件は、人気アイドルグループ内の実態と運営会社の不手際がクローズアップされ、波紋が広がっている。

 ただ、山口が深刻なケガを負ったわけでもなく、男2人も不起訴処分になるなど、さほど大した事件ではなかったはずだが、なぜこれほど大騒ぎになったのか。それは、グループ内の確執が明るみになったことに加え、山口本人が事件を「告発」し、終始後手に回った運営側の苦悩が垣間見えたからだろう。

 まず、グループ内の確執から見てみよう。AKB48のようなグループアイドルたちが「みんな仲は良い?」と聞かれれば、決まって「仲良いですよ」と笑顔で答える。当たり前だが、仲が悪くなくても、好き嫌いはあり、それは表面上の返答でしかない。

 そもそも芸能人は、友達が少ない印象が一般的であることと、特にグループになれば、むしろ仲が良い方が珍しい。それはグループのメンバー同士が必ずしも「友達」という関係性ではないからである。

 それは一般企業でも同じだろう。自分の同僚、つまり「仕事仲間」が友達と言えないことと同じだ。僕がかつて所属していたジャニーズでも同様であり、メンバー同士が苦楽をともにしていたとはいえ、友達という意識はなかった。綺麗事で言えば「ライバル」だが、その本音は「蹴落としたい敵」である。

 AKBをはじめ、多くのアイドルグループに言えることだが、出身地も年齢もバラバラで構成されているグループならなおさらだ。意識的に「仲良し」を集めたグループではないだけに、それは仕事仲間でしかない。古い友達同士で結成してメジャーを目指す「バンド」などとは全く異なった関係性がアイドルグループにはあるのだ。

 もっとも、こういった「知らない者同士」の関係なのに、「仲良しグループ」という印象を全面的に出したいのが運営側だ。それが分かっているから、温度差はあるが、メンバー同士は仲が悪くても「演技」で親友を演じている。カメラが止まったり、ステージをいったん下りれば、目も合わさず、口もきかないなんてことはザラにある。

 悪口や陰口もあれば、それをマネジャーや事務所に告げ口することだってある。衣装を切られたり、隠されたりなんて日常的だが、最も怖いのは今回のNGT騒動でも問題になった「プライベート情報」の流出である。ちょっと仲良くなった相手に、つい漏らした相談事が「彼氏の事」であれば、そんな情報はすぐに世間を駆け巡る。

 そもそも芸能界だけでなく、企業内の不祥事も、その出所は「内部の人間」だったというケースが圧倒的に多い。ゆえにアイドルの場合も、まずファンがどよめく「噂」のレベルから始まり、それがエスカレートして週刊誌などにスクープとして掲載される流出写真なども、出所は身近な人物が「犯人」だったケースが多い。ただ、いずれにせよ当人の脇の甘さが根本の原因なのだが。
NGT48の山口真帆=2017年3月(古厩正樹撮影)
NGT48の山口真帆=2017年3月(古厩正樹撮影)
 さて、被害を受けたアイドルが悩ましいのは、ネタを流した「犯人」を知っていながら、それを公にしにくいことだ。分かっていても確たる証拠がなく、その上相手を責めれば事が大きくなるだけに勇気もない。一歩間違えれば、アイドルとして自滅を招くリスクは大きい。要するに、アイドルの世界にいる者は「友達を作ってはダメ」なのである。

 今も僕のところに人間関係について相談にくる若手もいるが、芸能界で生きていく覚悟を決めた人へのアドバイスは「芸能人たるもの誰も信じるな」である。もちろんメンバーだけではない。地元の友達や親兄弟、親族であっても「危険人物」になり得る。むしろ加害者が家族のケースが最も恐ろしい。実際、歌手の倉木麻衣の暴露本は、そのネタ元が実の父親だった。