李相哲(龍谷大教授)

 北朝鮮の「非核化」をめぐり、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ大統領の2回目の首脳会談が2月下旬に行われる見通しとなった。だが、金委員長の「新年の辞」を読み解けば「対内的には自立経済を強調、対外的には既存の核を保有した状態でアメリカとの関係改善を図る」ことを宣言したようなものだ。

 対内的には「自力更生の社会主義建設の新たな進撃路を拓(ひら)いていこう」と呼びかけ、当面は国際社会の制裁が緩和されることはなく、厳しい状況が続くことへの予防線を張ったとみるべきだ。

 金委員長にとって2018年は大変な年だったのだろう。中国税関の統計を基にすれば、昨年1年間の北朝鮮の対外向け輸出総額は2億ドルに満たなかった。猛暑や集中豪雨などで農作物の作況もよくなく、この先2~5月をどう凌(しの)ぐかを心配しなければならない状況だ。

 ソファに座り、新年の辞を読み上げるという「余裕」を見せたのは、困窮した国内状況を隠し、焦りを見せまいとの演出だったのかもしれないが、金委員長は今、対内的にも対外的にも難しい状況に直面している。

 関係者の間では、200万人に上る餓死者を出した90年代後半の「苦難の行軍」と似た第二の「苦難の行軍」が始まるのではないかとささやかれているという。このような難局を打開し、一気に国内外の問題を解決するには、対外関係で突破口を開く必要がある。

 金委員長は、対外関係では三つの目標を挙げた。それは、①事実上の核保有国としての地位を国際社会に認めさせること②制裁の緩和③外来勢力の干渉を排除し韓国との経済交流の実現、である。

 では、この三つの目標を金委員長はどう実現するつもりだろうか。まず、核保有国としての地位について、金委員長は「完全な非核化へ向かっていくのは、わが党と共和国政府の不変の立場であり私の確固たる意思だ」と述べた。世界が注目した金委員長のメッセージの中で最も重要な部分と言っていい。

 金委員長が初めて肉声で「完全な非核化」に言及したとして、本当に非核化へ向けて動き出そうとしているのではないかと見る向きもあるが、このメッセージを誤って受け取ってはならない。

 実は、金委員長の非核化に対する姿勢は全く変わっていないのだ。金委員長は「われわれはもうこれ以上、核の武器をつくることも実験もせず、使用も伝播(拡散)もしないことを内外に宣布」したと述べている。だが、過去に製造したとみられる核の武器をどうするかについては触れていない。むしろ、過去の核については、使用しないこと、拡散しないことを約束しておらず、廃棄についても言及していない。

 北朝鮮の核は、既に保有しているとみられる「過去の核」と、現在なお能力の向上を目指して核物質を増やし、高度化を図っている最中の「現在の核」(国際原子力機関=IAEAやアメリカの研究機関の報告によれば、北朝鮮は核活動をやめていない)、核施設やミサイルエンジンの実験台など核能力を増強できる「未来の核」に分けられるが、金委員長が新年の辞でやめることにしたと言及したのはあくまで「未来の核」である。

 金委員長は、このような「複雑に絡んだ問題」を解決するために、トランプ大統領と2回目の会談に臨む意思を示したが、未来の核をなくすことについても、既に前提条件をつけている。つまり、アメリカが先に核の脅威をなくすべきだと主張しているのだ。実際、金委員長は新年の辞で「アメリカが(トランプ大統領が)世界の前でした約束を守るべきだ」と述べている。

 そもそも、昨年6月のシンガポールにおける米朝首脳会談で、トランプ大統領が金委員長に約束した事項は二つあった。「北朝鮮の体制の安全を保障すること」と「朝鮮半島の完全な非核化」だ。