ただ、今まで「非核化」について、米・朝・韓・国際社会では各自が異なる解釈をしてきた。特に米朝の間では決定的に違う解釈をしている。非核化とは、当然ながら「北朝鮮の非核化」だ。しかし、最近になって金委員長が約束したのは「朝鮮半島の非核化」であり、アメリカが言う「北朝鮮の非核化」は誤りだと主張する(2018年12月20日付、朝鮮中央通信の論評)。

 北朝鮮は米軍の「朝鮮半島を狙っている周辺からの全ての核の威嚇の要因を除去すること」を前提にしている。朝鮮半島周辺に米軍が原子力空母や核潜水艦、核弾頭を搭載可能な爆撃機など戦略武器を展開することをやめなければならない。

 また、金委員長は「韓国は外勢(アメリカを指す)との合同軍事演習をこれ以上許容してはならず、外部からの戦略資産をはじめとする戦争装備の搬入も完全に中止されなければならない」と新年の辞で主張した。

 そして、昨年から北朝鮮が講じてきた非核化の措置にアメリカが応える番との認識を示した。北朝鮮が非核化のための一環として豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破し、ミサイル発射台、実験場の解体に動いた「誠意ある先導的な措置」に対し、アメリカがそれ相応の措置を講じなければならないと述べた。

 さらに、金委員長は、アメリカに「何かを強要し、依然共和国に対し制裁と圧迫を続けるのであれば、新しい道を模索する」としながら、「正しい姿勢で対話に臨むべきである」と、一方的な制裁には屈しない姿勢をみせた。要するに、これ以上の譲歩がないことを表明したのだ。

 北朝鮮はこれから、最高指導者の言葉を実現すべく、アメリカが先に相応の措置を講じない限り、一歩も引き下がらないだろう。アメリカが北朝鮮の要求に応じない限り、非核化交渉は進展しないとみるべきだ。

 そしてその次は、制裁緩和を狙って硬軟両面戦術を駆使するだろう。「朝鮮半島と地域の情勢安定は決してたやすくつくられたものではない。周辺の国と国際社会は朝鮮半島の肯定的な情勢発展を推進しようとする北朝鮮の誠意のある立場と努力を支持すべきだ」とし、まずは国際社会が北朝鮮を評価し、「制裁緩和」に踏み切るべきだとする。

 韓国との関係については、アメリカや国際社会の干渉や圧迫を排除し、北南関係を発展させるべきだと強調する。具体的に、開城(ケソン)工業団地の事業、金剛山観光事業再開を促している。ただ、これらの事業では「代価を求めない」「条件をつけない」と言ったが、制裁突破のための手段として、なんとしても2019年にはこの二つの事業は再開させたいのではないか。

 狙いは、国際社会の制裁を無力化し、韓国との経済交流で突破口をつくり、平和と協力の雰囲気を維持しながら、国際社会の圧迫をはねつけるためとみられる。

 非核化交渉において北朝鮮の本音は以下の三つだ。①核施設の無力化、例えば寧辺(ミョンビョン)の核施設の凍結については、査察の段階でアメリカ、日本、韓国などが独自で科している制裁の解除を求める②核能力の廃棄、すなわち核物質の廃棄、施設の廃棄を引き換えに国連制裁を解く③保有している核については、アメリカに核保有(国)を認めさせた上で、駆け引きを続けつつ、段階を踏みながら軍縮会談に持ち込む。
ドナルド・トランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年6月、シンガポール(AP=共同)
ドナルド・トランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年6月、シンガポール(AP=共同)
 この三つのうち、トランプ大統領は①だけについては、応じる可能性はあるかもしれない。なぜなら、トランプ大統領は金委員長との2回目の会談に意欲を示し、完全な非核化の意思を一応は歓迎する意向を表明しているからだ。

 ただ、金委員長は今まで、2018年4月20日の労働党中央全体会議で採択した決定(核実験場は使命を終え、ミサイル発射実験はもはや必要ない)内容を超える非核化の措置を講じていない。それ以上の行動に踏み切るのは北朝鮮内部でのコンセンサスが必要で、形式だけでも党内の手続きを踏む必要があるが、今のところそのような気配はない。