2019年01月23日 11:27 公開

イギリスの家電メーカー、ダイソンは22日、本社をイギリスからシンガポールへ移転すると発表した。

これにより、ジョーン・ジェンセン最高財務責任者(CFO)とマーティン・ボウエン最高法務責任者(CLO)がシンガポールへ移動する。その他の業務は現在、本社があるイングランド南西部ウィルトシャーのマルムスベリーに残り、人員整理も行わない予定だ。

ジム・ローウェン最高経営責任者(CEO)は、イギリスの欧州連合(EU)離脱や税制が移転の理由ではないと述べ、「最大の機会が望める場所で事業を継続できるようにするためだ」と説明した。

「売り上げの面では、アジアで成長機会が加速している。アジアからは常に収益があるため、そこに最大限、注力するとともに、投資にも注視する」

「ダイソンはグローバル・テクノロジー企業と呼んで差し支えない。実際、グローバル企業になってから結構な時間がたっている。成功する最近の企業の大半はグローバルだ」

イギリス拠点の行く末は?

ダイソンはすでにシンガポールにオフィスを持ち、昨年10月には新しい電気自動車(EV)を現地工場で製造する計画を明らかにしている。

ダイソン製品のほとんどはイギリスで設計されているが、製造はアジア圏で行われている。

こうした中でローウェンCEOは、イギリス国内の拠点にも引き続き投資していくと強調した。

ウィルトシャーのハラヴィントンに新たな自社ビルと試験施設を建設し、これに2億ポンド(約284億円)を投じる。また、マルムスベリー本社の改装と研究施設の設置に4400万ポンド、同じ敷地内にある大学「ダイソン・インスティテュート・オブ・テクノロジー」の学生に3100万ポンドを投資する。

「マルムズベリーは我々の中心にある場所で、イギリス全土でも投資を続けていく」とローウェンCEOは話した。

また「税制の違いは取るに足らない問題だ」、「世界中で税金を支払っているし、引き続きイギリスでも納税する」と説明した。

今後、ダイソンは法人登記をシンガポールに移す予定。

創業者のサー・ジェイムズ・ダイソンはブレグジット(イギリスのEU離脱)を支持しているが、ローウェンCEOは、ブレグジットがダイソンに与える影響は小さく、緊急時対応計画も作っていないと述べた。

「欧州にあるサプライチェーンは全体のわずか2~3%で、西欧ではなく東欧に広がっている。サプライチェーンに支障が出るとは思っているが、現時点では流通に何らかの影響が出るとは考えていない」

ダイソンは併せて2018年通期決算を発表。純利益が前期比33%拡大し初めて10万ポンドを越えたほか、売上高も44億ポンドと28%伸びた。


<分析> セオ・レゲット、ビジネス担当編集委員

ジム・ローウェンCEOは、ダイソンはグローバル・テクノロジー企業だと説明した。

しかしそのルーツがイギリスにあることや、創業者のサー・ジェイムズ・ダイソンがブレグジットを支持していることを思えば、ダイソンの本社移転は政治にも影響を与える可能性が高い。

実際的には、変化はそう大きなものではない。シンガポールに登記を移し、取締役のうち2人がシンガポールへ移動する。

ローウェン氏によれば、イギリス国内の従業員4000人に影響はなく、税金をめぐる変化も小さい。ダイソンは2017年、イギリスで9500万ポンドを納税している。

ダイソンは引き続き、マルムズベリーやロンドン、ブリストルにある研究・エンジニアリング施設に投資する。ハラビントンには新拠点を設置し、EVの開発を計画している。

それでもなお、今回の移転は非常に象徴的だ。

ダイソンははっきりと、現在のビジネスの中心がアジアにあると言った。そこに最も大きな成長の機会があると。

移転の背景にはこうしたビジネス的な論理が働いているかもしれない。しかしイギリス自体がまとまった将来像の模索に苦戦している中、国内世論は今回の移転を歓迎しないだろう。


(英語記事 Dyson to move head office to Singapore