これまでトランプ大統領は、欧州連合(EU)及び日本に対して、安全保障問題と通商協議をリンクさせて交渉を有利に進めてきました。日本に対する米国製武器購入の圧力は、正に安全保障と対米貿易不均衡の是正の双方を狙ったものです。

 今回、トランプ大統領は新しい交渉の組み合わせによって、中国に対して貿易交渉で有利な立場に立とうとしています。ロイター通信とのインタビューで、孟副会長逮捕に対する介入を示唆しました。その裏側には、中国に対して刑事事件と通商協議を結びつけて、貿易交渉で中国から譲歩を引き出す意図があります。

 因みに、米中貿易協議において対中強硬派のロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、米CBSテレビのインタビューの中でファーウェイ事件に関して、「刑事司法上の問題と通商協議は別物である」と述べ、トランプ大統領とは異なったアプローチを望んでいます。

 では、トランプ大統領は具体的にどのようにして刑事事件と通商協議をリンクさせるのでしょうか。トランプ氏が描いている可能性がある筋書を1つ紹介してみましょう。

 トランプ大統領はカナダ政府に対し孟副会長の身柄引き渡しを強く求めます。最終的には、カナダの裁判所が身柄引き渡しを審査し、決定するわけですが、仮に実現すれば舞台はニューヨーク連邦地裁に移ります。米国で、孟副会長は有罪になり、禁固刑が言い渡されます。

 もしそうなれば、この時点で米中関係はかなり悪化しているでしょう。そこでトランプ大統領は、習主席のメンツを保ち、貸しを作るために、孟副会長に恩赦を与えます。そうすることで、通商協議で中国から最大限の譲歩を引き出せます。これがトランプ流のディールパターンです。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 以下で、トランプ流パターンについて詳細に説明しましょう。

 トランプ大統領には、ディールパターンが存在します。まず、自ら交渉相手に仕掛けていきます。米中貿易戦争では、トランプ氏から中国製品に対して追加関税をかけました。

 次に、対決姿勢をとり、事態をエスカレートさせ、意図的に危機的状況を作ります。問題解決の糸口が見えないため、交渉相手を含めたステークホルダー(利害関係者)は不安に駆られます。