ところが、緊張が高まりピークに達すると、トランプ大統領は対決姿勢を弱めて、一旦引きます。例の中国に対する90日の猶予が、これに当たります。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで12月1日、米中首脳会談を開催した際、中国製品に対する新たな追加関税の延期及び90日の通商協議の開始に合意しました。

 トランプ氏との全面対決の回避を探っている交渉相手は、ほっと安堵の胸をなでおろします。このタイミングを狙って、トランプ氏は相手から多くの譲歩を引き出すわけです。

 最後にトランプ大統領は「勝利宣言」を行います。バラク・オバマ前大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ビル・クリントン元大統領など歴代の米大統領が成し得なかった偉業を自分は達成したと豪語するのです。

 では、トランプ大統領は中国に与えた90日の猶予が終了する19年3月1日に、米中貿易戦争の勝利宣言を行うのでしょうか。率直に言って、その可能性は低いといえます。

 知的財産権侵害、強制的技術移転、中国政府による企業への巨額の補助金、米軍へのサイバー攻撃など課題が山積しており、これらを90日間の通商協議で、すべて解決することは極めて困難だからです。しかも、中国側がこれらの諸問題に対して、トランプ大統領が満足できる提案を出せるかは、まったく不透明です。

 加えて、20年米大統領選挙も絡んできます。米中貿易戦争に勝利して、次の大統領選挙に立候補する民主党候補及び共和党候補にはない業績作りをしたいトランプ大統領ですが、19年3月1日に勝利宣言を行うのはあまりにも早すぎます。というのは、再選を狙った大統領選挙は20年11月3日だからです。
米中首脳会談の成果を伝える3日付の中国紙・人民日報と環球時報(西見由章撮影)
米中首脳会談の成果を伝える3日付の中国紙・人民日報と環球時報(西見由章撮影)
 米中貿易戦争は、大統領選挙の期間、トランプ大統領にとって支持基盤にアピールできる好材料です。そこで、トランプ氏は中国に対する対決姿勢の強弱を巧みに使い分けながら、米中間に横たわる諸問題の解決を引き延ばしていく可能性が高いでしょう。

 それは中国にとって非常に厄介な問題ですが、逆に日本にとっては好都合なことです。仮に来年の3月1日に米中貿易戦争における勝利宣言を行ってしまえば、トランプ大統領は20年大統領選挙に向けて日米自由貿易協定を業績の一つに掲げようと、日本に対して同協定の締結を本格的に迫ってくるからです。

 結局、孟副会長逮捕と米中貿易戦争の行方は、日米貿易問題に影響を及ぼすということです。たとえ日本が次の標的になっても、トランプ流ディールパターンを見抜けば、同大統領の言動に対して不必要な過剰反応を示す必要はないでしょう。

うんの・もとお 明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。