加藤隆則(汕頭大学長江新聞與伝播学院教授)

 普遍的な司法の独立と正義が教科書通り存在している、と素朴に信じている点で、日本人は最も楽天的な国民かもしれない。だから、「米国の法が正義で、中国は法治国家ではない」と考えているとしたら、大きな勘違いだ。

 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(モウ・バンシュウ)副会長兼最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕されたのに続き、今度は中国で元外交官、マイケル・コブリグ氏らカナダ人3人が中国で拘束された。さらには遼寧省の大連市中級人民法院(地裁)が、薬物密輸罪に問われたカナダ人男性の差し戻し審で、死刑判決を言い渡した。2010年、日本の海上保安庁が尖閣諸島付近で操業中だった中国漁船の船長を逮捕し、その報復として、中国側が準大手ゼネコンのフジタの社員4人を「軍事管理区域の違法撮影」で拘束した事件が思い起こされる。

 当時、奥歯に物の挟まったような日本司法当局の「超法規的措置」によって、釈然としないまま船長が釈放され、福建省に送還された。同じように今回、カナダ政府を巻き込んだ米中の「場外乱闘」について、法と証拠を持ち出して解説しても大きな意味はない。ハイテクと経済の覇権をめぐる「パワー・ゲーム」なのだから、最後はハード、ソフトの力関係と体面の保持、そして損得に基づく駆け引きで落としどころを見つけるしかない。
2018年12月、カナダ・バンクーバーで、警備員に付き添われ司法関連施設に着いたファーウェイ副会長兼CFOの孟晩舟容疑者(Darryl Dyck/The Canadian Press提供・AP=共同)
2018年12月、カナダ・バンクーバーで、警備員に付き添われ司法関連施設に着いたファーウェイ副会長兼CFOの孟晩舟容疑者(Darryl Dyck/The Canadian Press提供・AP=共同)
 この点で中国のインターネット言論はたくましい。米国からの奇襲に対する中国政府の報復を受け、たちまち広まった言葉は「祖流我放」だ。「国も氓(ヤクザ者)なので(私)は心(安心)だ」との意を四字熟語で表したものだ。

 いくら中国の外務省や共産党機関紙『人民日報』が法や人権、道義や文明を説いて舌戦を交わそうと、内実は「仁義なき戦い」でしかない。そんなことはとうにお見通しなのだ。