2019年01月24日 13:00 公開

経済や社会が混乱状態に陥り、政府と反政府派の対立が続く南米ヴェネズエラで23日、野党のフアン・グアイド国会議長(35)が暫定大統領への就任を宣誓した。ドナルド・トランプ米大統領はただちにグアイド氏を暫定大統領として承認すると表明した。これを受けてニコラス・マドゥロ大統領率いる左派政権は、米国との外交関係の断絶を発表した。

グアイド国会議長は首都カラカスで大勢の支持者を前に、自分たちの反政府デモは「ヴェネズエラが解放されるまで」続くと宣言し、右手を挙げながら「暫定大統領として国家の行政権を正式に担うと誓う」と宣誓した。

トランプ米大統領によるグアイド議長の大統領承認を受け、マドゥロ大統領は米国との断交を発表し、米外交官に72時間以内に退去するよう命じた。

マドゥロ大統領は、米政府が国外からヴェネズエラを間接統治しようとしており、野党勢力がクーデターを企てていると非難した。

大統領府でテレビ演説したマドゥロ氏は、「介入主義はもうたくさんだ。この国の自分たちには尊厳というものがあるんだ!」と強調した。

トランプ大統領は声明で、マドゥロ政権が「正統ではない」と批判し、ヴェネズエラ政府において唯一正統な存在が国会だと述べた。

「ヴェネズエラ国民はマドゥロとその独裁政権に対し勇敢にも声を上げ、民主主義と法の支配を要求した」とトランプ大統領は声明で述べ、ヴェネズエラ国民の安全を脅かすような言動はマドゥロ政権そのものの責任とみなすと釘を刺した。

マイク・ポンペオ米国務長官は、アメリカがもはやマドゥロ氏を正式な大統領と認めない以上、マドゥロ政権による断交は認めず、「グアイド暫定大統領の政権を通じて」外交関係を維持すると方針を示した。

アメリカのほか、ブラジル、コロンビア、チリ、ペルー、エクアドル、アルゼンチン、パラグアイの南米諸国も、グアイド議長を正統な大統領として承認した。一方で、メキシコ、ボリヴィア、キューバはマドゥロ政権支持を表明している。

カナダはグアイド氏を支持し、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長(大統領に相当)はEU加盟国が「民主主義勢力への支持で連帯」することを期待すると表明した。

北米・中米・南米諸国の協力促進を目的とする米州機構(OAS)も、グアイド氏を大統領として承認。ルイス・アルマグロ事務総長はツイッターで「ヴェネズエラの暫定大統領となったグアイド氏におめでとうと申し上げる」と書いた。

マドゥロ政権は2017年、内政干渉を理由に OAS脱退を発表している。

デモで13人死亡か

ヴェネズエラでは大規模な反政府デモに対抗して、マドゥロ支持者のデモも行われているが、小規模なものに留まっているという。マドゥロ支持者たちは、ヴェネズエラ国内の混乱はアメリカや敵対的近隣諸国が支援する右派勢力のせいだと主張し、アメリカによる経済制裁は国の債務再編努力を阻害していると反発している。

NGOヴェネズエラ社会紛争監視団によると、23日のデモで13人が死亡したという。

ヴェネズエラ軍はこれまでマドゥロ大統領を支持しているが、グアイド氏は自分たちを支持するよう呼びかけた。

これに対して、ヴラディミル・パドリノ国防相は、グアイド氏の呼びかけを非難している。

BBCラテンアメリカのキャンディス・ピエッテ編集長は、マドゥロ氏がこれまで軍幹部を政権要職に就け、軍関係企業に高利益の油田関係の契約を与えるなどして、軍の支援を積極的に取り付けてきたと指摘する。

一方で、21日には首都カラカスの軍施設で兵士27人が反乱を試みたと伝えられている。

インフレ年率13万%

ヴェネズエラでは数年来、食糧や医薬品など生活必需品が不足し、停電が相次ぐなど経済危機が続き、2014年以来、約300万人もの住民が国外に逃れている。国会調査によると、2017年11から1年間のインフレ率は年率13万%に達した。

2013年3月にウーゴ・チャヴェス大統領の死亡に伴い、副大統領だったマドゥロ氏が後任選挙で当選したが、経済の失策と人権侵害への批判が内外で続いている。

昨年春の大統領選で再選されたマドゥロ大統領は今月初め、大統領2期目に宣誓就任したものの、不正選挙だと野党の反発は続き、全国的に反政府デモが続いている。

1999年に発足したチャヴェス政権以来、ヴェネズエラでは社会主義政権が続き、アメリカと対立してきた。トランプ大統領は2017年9月の国連総会で、「ならず者国家」としてヴェネズエラを名指ししている。

フアン・グアイド氏とは

2015年の選挙で野党がヴェネズエラ国民会議の多数党となったが、マドゥロ氏は2017年に別の議会を設立し、国会の立法権を剥奪した。

それまであまり有名ではなかったグアイド氏が今月初めに国民会議議長に就任すると、大統領選をやり直すまで大統領職代行の憲法上の権利が自分にはあると表明。グアイド氏の登場により、それまで分裂・対立していた反政府勢力が活気づき、まとまりを見せるようになった。

グアイド氏は学生時代、当時のチャヴェス大統領への抗議デモを組織していた。対するマドゥロ氏は、チャヴェス氏に後継指名され大統領となった。

(英語記事 Juan Guaidó: US backs opposition leader as Venezuela president