件の潮田氏のツイートにも類似した飛躍がある。大坂なおみが米国籍を選択したら、どうして安倍政権が倒れるのだろうか。本人どころか誰にも全く説明できない飛躍であり、「安倍政権を倒したい」という潮田氏の願望に無意識に結びついているとしか思えない。

 第三者から見れば、極めて無理な発想なのだが、ご本人にとっては自然なのだろう。なぜ、自身の思想信条から距離を置いて、事実を客観的に捉えられないのか。

 しかし、われわれには「望み」がある。二つ例を挙げたい。まずは大坂なおみ、その人が「希望」だ。グランドスラム初優勝を飾った昨年の全米オープンテニスの表彰式で、彼女が取った態度が今も忘れられない。

 準優勝のセリーナ・ウィリアムズがプレー中に審判に暴言を吐くなど、試合が終わっても会場は異様な雰囲気に包まれていた。そんなセリーナのかんしゃくで晴れの舞台を台無しにされ、表彰台でセリーナびいきの観客からのブーイングを受けたとき、大坂はとっさにキャップのつばをずり下ろし、涙を隠した。

 それでも、彼女は理不尽な扱いに怒ろうともせず、「優勝してどんな気持ちか?」という質問には答えずに「皆がセリーナの応援をしているのは知っていたわ。こんな終わり方になってごめんなさい。私が伝えたいのは『試合を見てくれてありがとう』っていうこと。ありがとう!」と観客に呼びかけた。そして、セリーナに対しても「あなたと試合ができて本当に感謝しています。ありがとう!」と伝えたのである。

 私を含む多くのファンが「なぜ君が謝るんだ!」と心の中で憤りながら、同時に彼女の美しい心持ちに感動し、涙がこみ上げて来たのではないだろうか。もちろん、大坂にはこれからもずっと日本を代表して輝かしいキャリアを築いてほしい。

 でも「なおみちゃん」がどんな選択をしても、われわれ日本人はずっと日本人の心を宿した彼女を応援し続ける。それが日本人だ。政権とは何の関係もない。潮田氏にはせめて、その事実だけでも気付いてほしい。
2019年1月、テニスの全豪オープン女子シングルスで優勝し、笑顔で記者会見する大坂なおみ(共同)
2019年1月、テニスの全豪オープン女子シングルスで優勝し、笑顔で記者会見する大坂なおみ(共同)
 もう一つは、教育制度の大きな変化である。「AI(人工知能)時代」を迎えて、大学の在り方も知性の測り方もそうだが、日本の教育制度はようやく変わらざるを得なくなった。マークシートで1点を競い合い、高学歴エリート層を築いてきた無意味な学習から、一日も早く脱却しなくてはならない。

 求められるのはAIが代替できない創造力と柔軟な知性だ。日本は今、「失われた30年」を経て、「二流先進国」に脱落する危機にある。それは根本的に、「日本的教育の敗北」を意味する。「壊れかけたインテリ」という戦後教育の残骸を乗り越えて日本を再興するためには、若い知性の育成が何よりも急がれる。