派遣切りとブラック新聞


 では、次に朝日新聞グループ全体の経営状態を把握するために、業績の推移を見てみよう。最も代表的な指標として、売上高と経常利益を2005年3月期と比較してみた(図表2参照)。
<図表2>
  新聞事業単体で見た場合、売上高は23%減少し、経常利益は6割減った。グループ全体で見ると、売り上げは同じく23%減少し、経常利益はほぼ半減している。グループ全体には当然、不動産業も含んでいるので、朝日新聞の事業はグループ全体で長期低落傾向にあることは間違いないようだ。この点について、過去10期分の売上と経常利益の変化率をグラフ化して確かめておこう(グラフ1参照)。
<グラフ1>
  このグラフは、2005年3月決算の数値を100とした場合のその後の変化を表したものだ。明らかにグラフは右肩下がりである。また、2009年から2010年にかけて経常利益は単体、連結ともに大きく減少し、一時的に赤字経営に陥ったことを示している。

 しかし、経常利益は2011年に突如としてV字回復した。ただし、回復したとはいえ、10年前の水準からは半減している。売上が減少を続けるなか、おそらく大規模な経費削減によって無理やり利益を積み増したことがうかがえる。

 そこで、有価証券報告書で従業員数の推移を確認してみた。案の定、この10年の間にグループ全体で正社員約3000人、臨時社員約1600人が減少している。正社員だけでみると、全社員の20%が削減されたことになる。

 やはり、奇跡のV字回復は大規模人員削減(リストラ)によって実現しただけかもしれない。そこで、この点を明らかにするために従業員数推移を変化率にしてグラフ化してみた(グラフ2参照)。
<グラフ2>
 グラフ化すると一目瞭然だ。まずは、グループ全体(連結)の正社員数と臨時社員数の減少の推移を比較してほしい。臨時社員が急激に減少したのに対して、正社員の減少のスピードは緩やかである。おそらく、朝日新聞が正社員のリストラよりも臨時社員のリストラを積極的に進めたのだろう。これは世間一般では「派遣切り」や「アルバイトの雇い止め」などと呼ばれるもので、朝日新聞がよく糾弾しているブラック企業のやり方だ。

 正社員の減り方が緩やかなのは、退職した社員の補充を行わずに自然減を狙ったのであろう。残された社員の負担は増える一方だったことは間違いない。まさか、ブラック企業批判を展開している朝日新聞に限って、残された社員のサービス残業で業務を支えていたわけではあるまい。仮にそうだとしたら、朝日新聞は自らがブラック企業であることを棚に上げて、巷の企業を「ブラックだ!」と批判していることになる。その時は、まさにブーメラン、「ブラック新聞」との誹りは免れないだろう。

 さらに、2011年から2012年にかけての本業(単体)における臨時社員の急増に注目してほしい。人数で見ると、292人から670人にほぼ倍増している。リストラが激しすぎて、正社員が音を上げてしまったのだろうか? 現場の不満を鎮静化させるために増員を図ったが、正社員だとせっかくのリストラ効果がなくなってしまうので、アルバイトでその不足を補ったことが推察される。または、定年退職した社員を再雇用する際、以前のように正社員待遇の嘱託として再雇用するのではなく、アルバイト扱いとして再雇用し、給料を大幅にカットしたのかもしれない。

 いずれにしても、このような大胆なリストラ策により、2011年の奇跡のV字回復は演出された。ただし、これは売上が逓減するなかでのコストカットによる延命策であって、新聞事業そのものが復活したわけではない。本業が長期低落傾向であることは紛れもない事実である。