西川りゅうじん(マーケティングコンサルタント)

 「物事に動揺する人がいますよね。それはとても人間的なことです。でも、私はそういうことに自分のエネルギーを無駄遣いしたくないと思うことがあります」「今日の第3セットでは、文字通り、自分の感情を消そうとしました」

 大坂なおみが、2018年9月の全米オープン優勝に続き、2019年1月、全豪オープン優勝後に発した言葉だ。

 21歳にして、何事にも惑わされず、グランドスラム四大大会のうち2大会を連続で制し、世界ランキング1位にまで上り詰めた不屈の精神力には、本当に頭が下がる。彼女が自らの手で勝ち取った実力と実績は、人種、肌の色、民族、国籍、性別、年齢といった社会における区別を超越している。

 日清食品による漫画『新テニスの王子様』とコラボした「カップヌードル」の広告動画で、大坂の肌の色が実際より白く描かれていると国内外のメディアやネット上で取り沙汰されたが、それでも彼女が動揺することはなかった。

 もとより、日清食品は、大坂の実力がどこまで伸びるか未知数だった2016年11月からスポンサー契約を結んで応援し続けており、意図的にホワイトウォッシュ(非白人を白人のように描くこと)したり、揶揄(やゆ)したりするつもりなどなかったのは明らかだ。

 しかし、同社は、国内外からの批判の高まりを受け、全豪オープン開催中の1月23日、動画の公開中止を余儀なくされた。広報担当者は、応援を目的に動画を作成したが「当初の目的とは大きく異なる状況になった」とし、「社会の中でいろいろな議論が起きている状況で、動画の公開を続けることで大坂の選手活動に影響があると判断した」と述べた。
日清食品の広告動画で肌を白く表現された大坂なおみ選手(右)。左は錦織圭選手(日清食品グループ公式チャンネルのユーチューブより)
日清食品の広告動画で肌を白く表現された大坂なおみ選手(右)。左は錦織圭選手(日清食品グループ公式チャンネルのユーチューブより)
 また、「日清グループは、基本的人権を尊重し、性別や年齢、人種などに配慮して企業活動を行っており、広告宣伝においても同じポリシーを掲げています。今後はより一層人権や多様性を尊重しながら、慎重に広告宣伝を進めるようにいたします」とコメントした。

 日本人の多くは、「大坂には雑音に惑わされず自分のプレーに集中してもらいたい」、そして、「日清食品に悪意はないのだから、そこまで目くじらを立てなくても」という気持ちだったに違いない。ただ、日本は島国で均質性が高い社会のため、欧米に比べて、人種や肌の色について鈍感な点があるのも否めないだろう。

 動画は日本の消費者を対象にしたものだったが、大坂の存在感が大きくなり世界的に注目される中、ネットを通じて世界中で同時に見られる時代になったこともあり、そういった感覚や意識の違いに批判が集中してしまったのだ。

 今後、日清食品をはじめ日本企業が、大坂がごとく今回のような問題に動揺せず、多様性を超越し、世界で勝利するには、どうすればよいのだろうか。