これは極端ではあるが、インドではかつての首相候補だったソニア・ガンディーの出生地がイタリアだったというだけで批判を浴び、首相に就任できなかったということもある。バラク・オバマ前米大統領が国籍問題でずっと執拗(しつよう)なネガティブキャンペーンを張られていたことも記憶に新しい。しかし、これはどれも国益を預かる政治家の問題であり、一般人では特に問題が生じるような話ではない。

 事実、日本の法務省のスタンスは「二重国籍は黙認」というのが実情である。

 これは日本の法律と海外の法律との整合性が取れないことに起因する。例えば、ブラジルは原則として国籍離脱が認められていない。よって日本国籍を取得したブラジル人は自動的に二重国籍にならざるを得ない。蓮舫議員のケースでいえば、日本が国家として承認しているのは中華人民共和国だが、本人が台湾(国)籍を主張した場合、どちらの法を適用しても両国にとっておかしなことになる。

 こうして日本のように単一国籍の原則が、世界の実情にそぐわなくなっているというのは、当の法務省も認めるところであり、これまで何度か法務省内でも議論になり、検討事項となっているようだ。要するに、日本の国籍に関する法律が「ガラパゴス化」しつつあることを意味する。

 こうした中、大坂なおみが日米どちらの国籍で東京五輪に出場するのか、ということが話題になっている。もし彼女が一般人であったならば、法務省も目くじらを立てることはなく、二重国籍状態のままでいただろう。だが、彼女はテニスの世界四大大会のうち二大会連続制覇という偉業を成し遂げた時の人である。とかく国籍問題に口うるさい人間が跋扈する日本社会では、簡単にはいかないだろう。

 そうすると「国の代表」と皆が思っている五輪選手として、彼女もいずれはどちらかを選ばなければならなくなる。五輪のルールでは、国籍変更などがあった場合、所属する国を変更することができる(ただし国籍変更後3年間の猶予期間がある)。
全豪オープン女子シングルス決勝前日、決勝に向けた調整で笑顔を見せる大坂なおみ=2019年1月25日、豪メルボルン(共同)
全豪オープン女子シングルス決勝前日、決勝に向けた調整で笑顔を見せる大坂なおみ=2019年1月25日、豪メルボルン(共同)
 むろん、国籍変更に関してスポーツ界ではそれぞれルールがある。ところが、日本の国籍法が世界のさまざまな国籍法と齟齬(そご)をきたしているように、世界の196カ国、さらにはまだ承認されていない国、または無国籍者などを受け入れているスポーツ界はさらに難しい事態に直面している。しかし、その解決策は意外とシンプルなこともある。

 例えばサッカーの場合、ナショナルチームの所属について、国籍という概念よりも、どの国のパスポートを保有しているかということが重視される。例えば、北朝鮮代表の経験がある現清水エスパルスの鄭大世(チョン・テセ)の国籍は韓国だが、彼は北朝鮮のパスポートを保有しており、さらには韓国でも日本でも代表として試合に出場した実績がないため「北朝鮮代表」で国際大会に出場した経歴を持つ。