政権陥落後、民主党内の保守派は、より苦境に追い込まれていく。保守的な政策志向の安倍晋三政権に対抗するため、民主党は共産党などとの「野党共闘路線」を選び、急速に左傾化していったからである。

 特に、2015年に「安全保障法制」が審議された際、野党側は法案の廃案を求める戦術を採った。細野氏ら保守派も、国会を取り巻くデモに参加し、徹底的に反対した。

 だが、それは保守派の本意ではなかっただろう。民主党の保守派は、集団的自衛権の限定的行使など安全保障政策に関して、政権担当経験もあったために、現実的な政策志向を持っており、自民党と考え方に大きな差異はなかった。しかし、徹底的な反対路線を貫く党方針によって、安倍首相率いる自民党との間にあった「議論のパイプ」さえも失ってしまったのである。

 2017年8月、細野氏は民主党の後継であった民進党を離党し、同年9月には、かつて日本新党から国会議員となった経歴を持つ東京都の小池知事らと希望の党を結成した。そして、同年10月の解散総選挙の直前に、民進党代表に就任した前原氏が「何が何でも安倍政権を倒す」と宣言し、党内分裂の引き金になった「荒業」が希望の党への合流だった。それは、結果的に立憲民主党というリベラル政党の結成を促し、衆院選は大惨敗に終わった。

 細野氏や前原氏らが主導した無謀な行動の背景には、「野党の左傾化」による孤立という強いストレスがあった。結局、細野氏が迷走を続けた末に、とうとう自民党に走った背景には、自民党に入りたくても入れなかった「新党保守派」としての運命があったに違いない。言い換えれば、政治家の苦闘と迷走の歴史が後押ししたとも言える。

 だが、自民党に移ったとしても、細野氏には明るい将来はないだろう。石破茂元幹事長や船田元(はじめ)元経企庁長官など、自民党は離党しての「出戻り組」にさえ冷たくて厳しい不文律がある。自民党所属経験のない細野氏が自民党に入っても冷遇されるのは目に見えている。

 ましてや、次の選挙も危ないだろう。同じ選挙区には自民党・岸田派の元職がいて調整は難しい。分裂選挙になる懸念がある上に、「裏切り者」のそしりを受けかねない細野氏に対しては、野党も絶対に対立候補を立ててくるだろう。加えて、細野氏は選挙に強いとされてきたが、これまでの支持者が今回の行動を理解してくれるかどうか分からない。

 しかし、この件について細野氏を「節操がない裏切り者」とバッシングして終わっていいのだろうか。そもそも、安倍首相や麻生太郎副総理・財務相、甘利明選対委員長、世耕弘成経産相ら「保守派世襲議員」がどれだけ立派な政治家だと言うのか。

2018年6月、証券会社から5千万円の提供を受けた問題で、記者の質問に厳しい表情の細野豪志元環境相
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提供を受けた問題で、記者の質問に
厳しい表情の細野豪志元環境相
 親の地盤を引き継ぎ、若くして議員になって、自民党の「当選回数至上主義」という年功序列システムの中で早く出世できる世襲議員よりも、一代で政治家になった人物の方が、時に「節操がない」「裏切り者」とされる行動を取ってでも、「生き馬の目を抜く」政界で生き残りを図るのが難しいのは明らかである。

 もちろん、自民党など多くの政党が「候補者公募」を実施するようになって、政界入りの障壁は以前と比べると随分と低くなったように見える。とはいえ、今の自民党を見渡しても、若手のリーダー格で次期総裁候補と呼ばれるのは「四世議員」の小泉進次郎氏であり、世襲議員は小泉氏以外にもまだまだいる。

 「地盤・看板・カバン」を持たない若者にとって、政界入りはいまだ高いハードルである。また、入っても出世するには大きなハンデがあると言わざるを得ない。細野氏の二階派入りは、選挙制度、有権者の政治意識、自民党のキャリアシステム、未熟な野党など、日本政治の構造的な問題を考える契機にすべきである。