長内厚(早稲田大大学院経営管理研究科教授)

 アパレル通販のウェブ・プラットホーム(基盤)である「ZOZOTOWN」から撤退するアパレルブランドが相次いでいる。ZOZOが新たな割引サービスを開始したことがその要因と言われている。

 ZOZOに限らず、ウェブ・プラットホームのビジネスは、プラットホーム企業と商品やサービスの提供企業との間に少なからず軋轢(あつれき)が生じていることが多い。アマゾンであれば出版社や配送業者と、ヤフーニュースなどのニュースサイトであれば、配信料の低下に苦しむ配信元メディアとの間で衝突が見られる。

 そもそも、プラットホームビジネスとは、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の各段階を複数の企業が分業する中で、プラットホームを握った企業がそのサプライチェーン全体を牛耳るというものだ。必然的に、企業間でせめぎ合いの状況になるのは織り込み済みのはずである。

 しかし、プラットホームビジネスの中には、プラットホーム企業とプラットホームに製品を提供する企業の双方が「Win-Win」の関係になっている場合もある。米半導体大手のインテルとIT大手のマイクロソフトがハード、ソフト双方のプラットホームを提供し、エレクトロニクス各社がその他のデバイスを開発するパソコン(PC)ビジネスは、まさに代表的な例だろう。プラットホームビジネスだから、常にこのような軋轢(あつれき)が生じているというわけではない。

 問題は、プラットホーム企業が顧客と直接向かい合う流通プラットホームを担っていることに起因しているのではないだろうか。売る側は少しでも高く売りたい一方で、買う側は少しでもいい商品を、常に安く、あわよくば無料で手に入れたいと考える。

 プラットホーム企業は、プラットホームを牛耳っているからこそ、商品やサービスの提供企業よりも強い立場にいる。そんな強いプラットホームを支えるのは顧客からの支持であり、いつも安く購入したいと考える顧客に対しては下手に出ざるを得ない。
アマゾンの宅配用ダンボール箱(ゲッティイメージズ)
アマゾンの宅配用ダンボール箱(ゲッティイメージズ)
 また、プラットホーム企業は、顧客に高く売る努力をするよりも、商品提供企業にプレッシャーをかけて価格を引き下げる方が容易である。つまり、短期的なビジネスだけを考えれば、商品提供企業を泣かせて安く販売させる方がよいということになる。

 価格を引き下げる要因は他にもある。強力な流通プラットホームが構造的に製品差別化しにくいことだ。これらZOZOやアマゾンに共通して言えるのが、大量の商品の中から簡単に最も安い商品を見つけられる、すなわちユーザビリティ(使い勝手)の高いウェブサイトを構築していることだ。

 大量の商品の中から簡単に選べるということは、一つひとつの商品情報が「最小化」され、最小限の商品情報と価格だけが分かりやすく比較できることを意味する。ところが、企業は自社製品の優位性を顧客に伝えなければ、高価格でも納得して買ってはもらえない。製品差別化は、企業にとって商品の価格下落に対抗する重要な手段なのである。