吉田潮(ライター・イラストレーター)

 東京五輪、本当にやるんだな。世界中に虚勢張って大ウソこいて大風呂敷広げた割に、課題は山積み。エンブレム盗作騒動に新国立競技場のデザイン騒動、さらには招致活動賄賂疑惑って。もう呪われているとしか思えないが、後へは引けず。こうなったら過去の成功も苦労話も交えて讃えて、「なんだか分からないけど東京五輪はすごい!」と思わせてしまおう、と国と東京都とテレビ局各局。

 NHKは4K&8Kで大枚はたいちゃったから、五輪盛り上げて元をとらないと。そこで仕込んだのが大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』……という印象がある。

 初回は酷評の嵐。宮藤官九郎ドラマをこよなく愛する人の口からも、「これはさすがにキツイ」「初回で脱落」という声が聞こえた。確かに、主役が誰だか分からん。もちろん、NHKの鼻息荒い宣伝番組を見ていれば、中村勘九郎と阿部サダヲのW主演は分かったはずだが、宣伝もしつこすぎると逆効果という典型例。とにかく登場人物が多くて、主役級の俳優もわちゃわちゃと画面上にひしめいていたのだから。

 さらに、描く時代もひとつじゃない。明治の話? いや、昭和の東京五輪じゃないの? メインは柔道の話? マラソンの話? 水泳じゃないの? え、落語家まで出てくるの? もうハテナが頭上に浮かびまくりで、さすがに情報処理しきれず。年寄りは早々にリタイア。いわゆる定番の大河ドラマが好きな人も脱落。辛抱強く見続けた人だけが到達できる過酷な日曜夜になってしまう予感。みんなダラダラと見るはずだったのに…と。
NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』の取材会に出席した(前列左から)中村勘九郎、役所広司、竹野内豊(後列左から)永山絢斗、古舘寛治、シャーロット・ケイト・フォックス=茨城・ワープステーション江戸
NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』の取材会に出席した(前列左から)中村勘九郎、役所広司、竹野内豊(後列左から)永山絢斗、古舘寛治、シャーロット・ケイト・フォックス=茨城・ワープステーション江戸
 まあ、怒濤(どとう)の初回はさておき、2回目からは勘九郎演じる金栗四三(かなくりしそう)に、かなり焦点が絞られた。グンと入り込みやすくなったし、世間の評価も上がったような気がしているのだが、どうだろう。

 少なくとも私は、37歳の勘九郎が演じる四三の、想定外の若さとみずみずしさに驚いたし、土着感を残した筋骨隆々な体型にも目をかっぴらいた(私の周囲の女性たちも、案外ここに反応していた)。勘九郎のコミカルな家族も、大河っぽいノスタルジーを込めた生育背景も存分に楽しみ始めたんだけどなぁ。