例えば、立憲民主党の蓮舫副代表はツイッター上で次のように述べている。

 「アベノミクスの成果の根拠として、去年6月に前年比3・3%としていた賃金上昇率の伸び率が、実は1・4%だった。実質賃金の伸び率で比較すると、2%が実は0・6%と推計されました。昨年1月から11月の平均は、マイナス0・5ではないかと推計もされます。野党ヒアリングで厚労省はおおむね認める発言をしました」

 まず、安倍首相自ら国会で説明している通り、アベノミクスはその成果の根拠としても、政策目的としても、実質賃金の伸び率を重視したことはない。蓮舫氏はこの点で事実誤認している。

 さらに、前年比での実質賃金の伸び率がマイナスなのは、単に17年が18年よりも実質賃金の「水準」が高かったからである。しかも、アベノミクス期間中の賃金指数を、不正データと修正データとを比べると、むしろ上昇している。都合の悪いデータを隠すことは十分考えられるが、都合のいいデータを隠す意図は、さすがに政権側にはないと考えるのが常識的だ。

 もちろん、強固な反安倍主義者の中には、それでも政権への「忖度(そんたく)」があった、と考える人がいるが、もはや事実を提示して納得できるようなレベルの人たちではないだろう。悪意か妄執か、あるいは頑なな政治イデオロギーの持ち主か、いずれにせよ経済学による説得では無理である。

 またアベノミクスの開始当初から、なぜか蓮舫氏のように実質賃金とその伸び率を重視する人たちが多い。その多くが反安倍、反アベノミクス論者である。

立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長=2018年5月(春名中撮影)
立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長
=2018年5月(春名中撮影)
 だが、そもそもアベノミクス、その中核であるリフレ政策(デフレを脱却して低インフレ状態で経済を安定化させる政策)は、実質賃金の水準や伸び率の動きをただ上げればいいだけの政策のように、単純な見方はしていない。むしろ、長期停滞からの脱出局面(現時点)では、実質賃金の伸び率が低下することも不可避であると主張してきた。

 リフレ政策が効果を与える停滞脱出期においては、実質賃金の切り下げが生じる。なぜなら、雇用が増加することで、新卒や中途採用、退職者の再雇用といった新たに採用された人たちの賃金は、既に長年働いている人たちの賃金よりも低いことが一般的だ。

 すなわち、雇用される人数が増え、失業率が低下することは、同時に平均的な賃金を低下させることになる。これを「ニューカマー効果」という。