確かに、今回の事象に何らかの意見を持つことは自由である。だが、その意見の表明方法が、いつの間にか違法行為にまで踏み込んでいるとしたらどうだろうか。しかも、そのことが後々違法と問擬(もんぎ)される事態になったとしたら、それは投稿する側も本来望んでいないであろう。

 やはり、自らが今一度、炎上に関わることの意味や影響を冷静に捉え直す必要があるように思う。事実、私が過去に会った加害者は炎上に加担したことを後悔していた。

 炎上の過程の中では、当事者のみならず、その家族や関係者に対してまで権利侵害が行われる。その家族や関係者は、本来何ら関係がない。しかし、家族や関係者に関して調べ上げられ、関連するさまざまな情報が投稿されている現状を考えると、「一族郎党にも累が及ぶ」中世的な発想の持ち主か、とさえ思う。

 日本の法制度において、家族や関係者であることのみを理由として法的責任を問う法律は存在しない。法律で問われるのは、行為者に対する「個人責任」が原則である。監督責任を果たしていない場合や選挙犯罪における連座制など、行為者ではない者も法的責任が問われる場合もあるが、あくまで例外的だ。

 そもそも、今回の事象では、生徒らに対して民事上でも刑事上でも法的責任が問われているわけではない。であれば、「家族や関係者にも責任がある」といった言説は、あくまで心情面から発生する責任論でしかなく、家族や関係者に対する権利侵害を正当化するものではないのである。

 今回の炎上では、コンプライアンス(法令順守)に基づく経営が求められるはずの会員制交流サイト(SNS)やホスティングサービス、アドネットワークといった大手企業のサービスが利用され、生徒や関係者の権利侵害情報が流通している。権利侵害情報を投稿する人間が、最も悪質であることは言うまでもない。だからといって、さらにここで問われなければいかないのは、大手IT企業のサービスを利用して権利が侵害され続けている事実だ。

 今回の事件がネット上で炎上しているという事実を、ネットに毎日触れる者であれば知らない者はいない。むしろ、IT企業であるがゆえに、内部でこの問題について知っている者も当然いることであろう。現在進行形で権利侵害情報が流通していることを認識しているのであれば、各企業は広告停止や送信防止といった対応を、法的な検討に基づき行うべきではないか。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 だいたい広告主にしても、権利侵害情報に対して広告費用を支払いたい企業などいないであろう。インターネット広告費が1兆円を超え、多くの企業がインターネット広告費を支出している中、企業の側にもネット広告の出稿先に対する厳格なチェックが求められている。

 過去には、ユーチューブ上で人種差別動画が投稿され、その動画で大手企業の広告が表示されている実態を英タイムズ紙が報じたことから、一部企業がユーチューブからの広告を引き上げたことがあった。日本では、まだ、この問題についてきちんと論じられていないところがある。今後企業におけるコンプライアンスの内容として、適正な広告出稿先かどうか精査することが求められていくと、私は考えている。