高橋知典(弁護士)

 東京都町田市の都立町田総合高校で、生活指導担当の50代の男性教諭が、高校1年の男子生徒(16)の顔を殴るなどの体罰を加え、暴行の場面を撮影したとみられる動画が会員制交流サイト「ツイッター」で拡散した。生徒が教諭に「ツイッターで炎上させるぞ」「小さい脳みそでよく考えろよ」などの暴言を浴びせた後、教諭が暴行する様子が収められていた。都教委は処分を検討している。

 都教委によると、体罰があったのは今年1月。生徒がピアスをつけて登校したことがきっかけで口論となった際、教諭が生徒の顔を拳で殴り、腕をつかんで引きずるなどの暴行を加えたという。生徒は打撲や口の中を切るけがをした。

 学校側は体罰を受けた生徒と保護者に既に謝罪した。問題の教諭は「生徒の言葉にカッとなって暴力をふるってしまった」と説明しているという。日常的に体罰があったという事実は今のところ確認されておらず、温厚で信頼のある教諭が「なぜ?」と周囲では話題になった。

 教員による懲戒としての体罰は、日本では法律によって完全に禁止されている(学校教育法11条但書)。このため、体罰に至った理由は何であれ、本件の教諭に関して、何らかの処分が下されることになるだろう。一方で、教諭が手を出すまでの生徒とのやりとりを見ていると、教諭は意図的にあおられ、手を出したところを撮影することが目的になっているようにも見える。教諭側への同情の声も聞かれるゆえんである。

 しかし、この事件は、単に学校教員が生徒を体罰した短気な点や、あおった生徒のずるさといった問題以上に、現実に合わない懲戒制度で対応せざるを得ない教員と生徒の力関係の複雑さや歪(いびつ)さを映し出しているように見える。

 禁止されている体罰は、いわゆる直接的な暴力と「被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの」がこれに当たる。例えば、「別室指導のため給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない」指導なども体罰に該当することになる。
※写真はイメージです(GettyImages)
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 実際に、教員が生徒に体罰を行った場合には、教員として免職処分など厳しい処分が行われることもある。また、刑事処分としても、暴行罪や傷害罪が成立する可能性があり、生徒の所持品などを壊せば器物損壊罪に該当する可能性もある。

 以上のように、体罰を行った教員側には刑事処分を含め、厳しい対応が行われる。

 一方、日本において、生徒に対する懲戒は基本的に、訓告、停学、退学処分である。また、学校によっては「停学ではない」自宅謹慎や、別室授業として保健室のような場所で学校内謹慎を行わせることや、放課後の居残りをさせたり、宿題を厚くしたりすることも懲戒制度としては認められている。ただし、小学校や中学校では、義務教育課程のため、公立私立を問わず教育の機会を奪う停学処分は行うことができず、公立学校では退学処分を行うことができない。