2019年02月05日 16:56 公開

ネスタ・マグレガー、ジミー・ブレイク、BBCニュースビート

米ジョージア州アトランタを拠点とするラッパー、21サヴェージ(26)が3日、米移民当局に逮捕された。

今年のグラミー賞候補にもなっている21サヴェージ(本名シャヤア・ビン・アブラハム=ヨセフ)容疑者について、米移民税関捜査局(ICE)は、実際にはアトランタ出身ではなくイギリス生まれで、在留資格(ビザ)は13年前に失効したと逮捕理由を説明している。

人気歌手のいきなりの逮捕に大勢が当惑し、何が事実なのかを知りたがっている。

1. 曲を聴いたことがあるとしたら、どこで?

最新シングルはJ・コールと共作した「A Lot」。オンライン発表から48時間以内にそのビデオを観たのは(この記事を書いている現在)880万人。もしその1人ではない場合、チャート1位になったポスト・マローンのシングル「ロックスター」は聴いたことがあるかもしれない。あの歌詞を書いたのが、21サヴェージだ。

「ロックスター」の前には2016年にドレイクの「Sneakin'」の歌詞を提供。今年のグラミー賞では「ロックスター」でレコード賞とラップパフォーマンス賞の2部門でノミネートされている。

2. ソロ歌手としては?

他のアーティストへの歌詞提供のほかに、ソロ活動もしている。「スローターギャング」というユニットと共にソロ歌手として活動を始め、ソロ・アルバムを2枚発表している。

最新の「I Am > I Was」には、チャイルディッシュ・ガンビーノ、ヒップホップ・トリオ「ミーゴス」のオフセット、トラヴィス・スコットなど、ヒップホップ音楽きってのビッグネームも参加している。

3. 芸名の由来は?

2013年の21歳の誕生日に、麻薬取引の失敗が原因で6回撃たれた。一番の親友はその時に亡くなった。

21サヴェージを子供の頃から知るという人たちには「Lil' Man(おちびさん)」とも呼ばれている。要するに子供の頃は、背が小さかったのだろう。

4. 今回の騒ぎはなぜ?

多くのファンにとって21サヴェージは生粋のアトランタっ子だ。

曲にはしょっちゅうアトランタが登場するし、21サヴェージはもう何年もアトランタのラップ・シーンに欠かせない存在だった。

それがここへ来て移民当局は、いや彼は2005年7月にアメリカに入国し、その翌年にビザが切れても出国しなかったのだとして拘束した。

5. どこで生まれたのか?

インターネット探偵の真似事をしても、はっきりとしたことは分からない。

ストリーミング・サイトのスポティファイは「アトランタ拠点」としか書いていないし、アップル・ミュージックでは西インド諸島のドミニカ「出身」と表示される。

イギリスの家系検索サイト「ancestry.co.uk」で本名の「Shayaa Bin Abraham-Joseph」を検索しても、一致した結果は出てこない。本名に一番近い検索結果は「Sheyaa Bin Abraham」に関するものだ。確かにこれは21サヴェージその人ではないかもしれないが、誕生日は一致する。この場合、ロンドン東部ニューアムだと書いてある。

そして、常に変わり続けるウィキペディアは今回もたちまち、書き換えられた。4日朝まではイギリス生まれということになっていたが、今では「論争中」と修正されている。

6. いつからアメリカに?

米ICEは、2005年に入国し、翌年にはビザが切れたと説明している。

7. 自分はアメリカ人だと言ったことは?

答えは、ノーだ。そう思わせる発言をしたという裏づけは見つからなかった。ただし、アトランタで育った話はよくしている。

8. アトランタにはいつから?

2016年のインタビューでは、「12歳のころ」に授業に銃を持ち込んだため、アトランタのストーン・マウンテン中学を退学になったと話している。

本人が言及したアトランタとの直接的な関わりで、このエピソードが最も年齢が低い。同じインタビューでは、初めて銃を目にしたのは8歳の時だったと話しているが、それが具体的にどこだったのかは触れていない。

9. アトランタへの言及はどれくらい?

麻薬と銃に囲まれてアトランタで育ったという内容の曲があまりに多いため、あらためてどこの出身か問いただす必要もなかったというのが、大勢の感覚だ。

10. なぜ今まで誰も気づかなかったのか?

米シンクタンク、移民研究センターによると、アメリカで暮らす「必要な書類のない移民」は人口の3%超に相当する1060万人だという。

選考の優先順位が決まっていないため、21サヴェージの移民資格について何か問題があったとしても、それが表面化するには時間がかかるのは当然だった。

ドナルド・トランプ米大統領は南側国境こそ不法移民問題の元凶だという口ぶりだが、実際にはビザが切れても居残る「書類のない移民」が、不法移民のほとんどだ。米当局は、21サヴェージもその1人だと主張している。

11. ではなぜ今になって?

アトランタにあるデカルブ郡警察本部の事件調書によると、警察は3日、停車中の車にいた21サヴェージ容疑者を逮捕した。現場には、銃を使った暴行などの疑いで逮捕された別の若いミュージシャン、ヤング・ヌーディもいた。

逮捕について、なかにはこのところ21サヴェージの歌詞が前より政治的になっていたからではないかという意見もある。3日のNFLスーパーボウルがアトランタ開催だったため、その分だけ21サヴェージが注目されやすかったのではないかという人もいる。しかし当局は関連性を認めていない。

12. 有名になってからアメリカを出たことは?

アメリカ国外で過ごしたことがあるとインタビューで話したことはない。唯一あるとするなら、ライブの日程についてマネージャーがニューメキシコとメキシコを混同するのを、記者が又聞きしたというくだりだけだ。

13.ツアーをしたことはないのか?

ツアーはある。しかし、これほどの人気アーティストなのに、アメリカ国内ツアーだけだ。

14.自分をイギリス人と呼んだことは?

ない。アトランタ出身だと誰も疑う必要がなかったと同じように、誰も21サヴェージについて、イギリス出身かと考える必要が何もなかった。

15.何か兆候は?

アトランタで開かれたチャリティー・イベントの会場リポートでは、司会者が女性を「21サヴェージのママ」と呼んで、話をしている。この「ママ」は、かなりはっきりしたイギリス発音だった。

16. 警察沙汰はこれが初めて?

いいえ。2014年10月には運転していた車を警察に停められている。車内には麻薬があったという。

17. アトランタの人たちは何と?

繰り返してきたように、誰もが驚いている。

市民の多くはアトランタの良い「顔」だと歓迎しているし、何回もチャリティー・イベントを市内で開いていることを評価している。

地元ラジオ番組「ニュースビート」で住民の1人は、「有名になってすごく目立って、最高の音楽を作っていた。この町からそういう人が1人いなくなるけど、やっちゃいけないことをしていて、捕まったんだと思う」と話した。

18. アーティスト仲間は何と?

ご想像の通りで、ほかのミュージシャンは大方、好意的だ。

たとえば、「ミーゴス」のオフセットは「黒人が成功した。連中はいつだって何かしら俺たちを引きずり下そうとする」とツイートした。

https://twitter.com/OffsetYRN/status/1092259523195211776

オーストラリアのラッパー、イギー・アゼリアは「もし21サヴェージの話が正確なら、アメリカに残ってほかのドリーマーの代弁者になれるといい」と書いた。「ドリーマー」とは、幼少期にアメリカに入国した不法移民の強制退去を遅らせ救済する制度(DACA)の対象者を指す表現でもある。

https://twitter.com/IGGYAZALEA/status/1092284397666160640

19. そのほかの意見は?

インターネットは時に辛らつな場所だと、みんな知っている通りだ。

ロンドン在住のドティーさんは、「21ってのはSE21のこと??? 21サヴェージはダリッチ出身てこと!???」と書いた。SE21はイギリスの郵便番号の一部で、ロンドン南東部を示す。

https://twitter.com/AmplifyDot/status/1092329643842113536

アイルランド・ダブリン在住のカラムさんは、「てことは……じゃあ21サヴェージはこれからユーロヴィジョンでイギリス代表になれるの?」とからかった。ユーロヴィジョンとは欧州放送連合が毎年開く音楽コンテストで、欧州では毎年話題のタネになる。

https://twitter.com/calimadu/status/1092355903775522817

カナダ・オンタリオの「ルス・アンティレーゼ1113」さんは、「英女王の身長は?」という検索結果と共に、同じ身長の女性に「乗れなきゃ死ぬ」と書いた21サヴェージの歌詞に触れ、「手がかりはずっとあった。最高の作詞家」と書いた。

https://twitter.com/luzantillaise1/status/1092342500168060928

20.これからどうなる?

ICE報道官によると、強制退去手続きを進める間、拘束は続く。

裁判所判断を待って、今後の対応を決める方針という。

21.ミュージシャンとしてのキャリアはどうなる?

同情する声もあるようだ。家族や友人、これまで築き上げてきた人生を根こそぎ失うかもしれないのだから。

一方で、ラップやヒップホップは「本物」かどうかを何より重視するジャンルだ。「ほかに何を隠してるんだ?」と思うファンはいるかもしれない。

(英語記事 21 questions about 21 Savage