笠原英彦(慶応大法学部教授)

 秋篠宮家の長女、眞子内親王殿下の婚約問題は予想外の不幸な展開をみせた。お相手の小室圭氏の母親の借金問題が浮上すると、お二人の行く末には暗雲が立ち込めるようになった。昨年以来、こうした小室家をめぐるスキャンダラスな報道はエスカレートするばかりである。これに対し、小室氏は明確な説明を避けてきた。ついに秋篠宮殿下も会見で、小室氏に「それ相応の対応」を求められた。

 小室氏は本年1月22日、文書を発表した。しかしあまりに唐突で内容のない文書の公表は物議を醸し、かえって事態を混迷させている。

 ようやく小室氏が自身の母親と元婚約者との間の金銭トラブルをめぐる一連の報道について、その経緯を説明し釈明すると期待していた。ところが、文書では「母も私も元婚約者の方からの支援については解決済みの事柄であると理解してまいりました」とし、一連の報道に困惑しているという。この中身の伴わない文書にどれだけの国民が納得しただろうか。

 宮内庁関係者からも「秋篠宮さまの問いかけへの回答になっていない」と落胆の声が聞かれたのも当然である。米国留学中の小室氏に対する厳しい批判の声とともに、眞子さまにはお気持ちを察し、同情が寄せられた。

 昨年2月、約1カ月後に予定されていた一般の結納にあたる「納采の儀」とお二人の婚姻に向けた諸行事の2年間延期が発表された。本年は4月から5月にかけて、天皇陛下のご退位、皇太子殿下のご即位が予定されている。お代替わりという大きな節目の年である。そのため、お二人の婚約問題は来年に延期されたのである。この間に、事実上の婚約解消に向けた水面下の駆け引きが行われるとの観測がささやかれている。

 金銭問題発覚後、小室氏は釈明など問題解決に向けた真摯(しんし)な行動に出なかった。今回の文書公表を含め、小室氏の対応からは、同氏が内親王殿下の配偶者にふさわしいとはとても考えられない。
小室圭さんが公表した、金銭トラブルは「解決済み」と主張する文書=2019年1月(共同)
小室圭さんが公表した、金銭トラブルは「解決済み」と主張する文書=2019年1月(共同)
 内親王をはじめ女性皇族が民間人と結婚する場合は、皇室典範12条の規定に従い皇族の身分を離れることになる(皇籍離脱)。確かに憲法24条は婚姻の条件を「両性の合意のみ」に限定しているとはいえ、これまで女性皇族のお相手はいずれも名家の男性であった。2014年、高円宮家の次女、典子さまは出雲大社の権宮司、千家国麿氏のもとに嫁がれた。天皇陛下の長女で内親王の清子さまも、東京都庁勤務の黒田慶樹氏とご結婚され、さらに最近では、高円宮家の三女、絢子さまが大企業のエリート社員のもとに嫁がれている。

 一方、小室氏は眞子さまと知り合うことになったICU(国際基督教大学)を卒業後、一橋大大学院に通う傍ら、都内の法律事務所にパラリーガル(弁護士の業務をサポートする法律事務職員)として勤務している。いわゆるシングルマザーの家庭に育ち、決して裕福でなかったとはいえ、それが直ちに内親王の配偶者となる資格を有しないということにはならない。

 しかし将来のことはともかく、現在の小室氏自身に果たして内親王と結婚する基本要件としての経済力があるかと問われれば、歯切れのよい回答を出すことはなかなか難しかろう。もちろん眞子さまには婚姻に際し一時金が給されるが、秋篠宮ご夫妻のお悩みが軽減されるとは思えない。