表面的には米ロが対立しているようで、裏ではプーチン大統領はトランプ氏を支持し、これを利用しようとしています。ロシアでの不動産ビジネスを進めているころから、クレムリン(ロシアの大統領府)とトランプ氏は密接なつながりがあると指摘され、一部にはトランプ氏がロシア特有の「ハニー・トラップ」にはまり、ロシアの言いなりとの見方もあるくらいです。それはともかく、米富豪ロックフェラー家の銀行家、デービッド・ロックフェラー氏が存命のころからプーチン氏は裏で米国と協働していたと言われます。

 従って、トランプ・プーチン両名の近い関係から、北方領土を日本に返還する意思があるなら、米国は北方領土に米軍を置かないことは、プーチン氏に伝えているはずで、プーチン大統領が安倍総理に「北方領土に米軍を展開させないと米国を説得できるのか」と質していたのは茶番と見られます。トランプ氏からはとうにその点の情報は伝えられているはずです。

 要するに、何より重要なことは、安倍総理がこの「トランプ・プーチン・習近平のサークル」に入れてもらえているのかどうか、にかかっています。このインナー・サークルに入っていれば、トランプ大統領から横やりが入ることもなく、むしろ米軍を北方領土に展開しないから話を進めるよう、後押しがあってもよいくらいです。プーチン大統領もその前提で話を進められます。

 その場合、モスクワで領土返還阻止行動が起きても、閣僚が反対しても、プーチン大統領のリーダーシップでこれを説得し、あるいは押さえつけることも可能です。

 しかし、日本が勝手に両国との「厚い信頼関係」と思い込んでも、当のトランプ大統領、プーチン大統領が安倍総理を仲間と見なさなければ、話は別です。ロシア国民の7割以上が反対する北方領土返還は、プーチン大統領と言えども容易ではありません。

 従って、この交渉がうまく進むかどうかは、安倍総理と米ロ両首脳との真の信頼関係が築かれているのか、安倍総理がこのインナーサークルに入れてもらえているのかどうかの「リトマス試験紙」にもなります。最近のロシア側の出方から見ると、25回の首脳会談にもかかわらず、安倍総理に対するロシアの信頼は必ずしも醸成されていないように見られます。今になって、交渉が進むよう日ロの信頼関係構築が急務と言っている始末です。
会談前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍晋三首相=2018年12月1日、 ブエノスアイレス(共同)
会談前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍晋三首相=2018年12月1日、 ブエノスアイレス(共同)
 その流れからすると、日本が立場を曲げて「2島プラスアルファ」を目指しても、今のロシアからは歯舞色丹の領土返還もなく、元島民の利用権は認める程度の「ゼロ島プラスアルファ」となる懸念も高まっています。それでも安倍政権が長期政権化のために平和条約締結を優先すれば、領土が確定して領土交渉の道は断たれる上に、さらなる経済協力は日本の持ち出しになります。

 それでは日本国民は納得しません。これまでトランプ政権、プーチン大統領との信頼を構築するためにどれだけの資金と時間を投じたのか。北方領土問題の返還が果たせないとなれば、「毎月勤労統計不正」以上に安倍政権の存立基盤が大きく揺らぎます。安倍総理はいよいよ正念場を迎えました。