山田順(ジャーナリスト)

 安倍晋三首相という人は本当に人がよく、ロシアのプーチン大統領が大好きなのだろう。この6年ほどの首相在任中に、プーチン大統領と25回も首脳会談を行っている。なんと、年4回以上のペースである。同盟国でもない国の首脳とこんなに会うのは、どう見ても異例中の異例だ。

 首脳会談をやれば、それなりにおカネがかかる。もちろん国民の税金だ。誰か、これまでどれくらい税金がつぎ込まれたか教えてほしいと切に思う。
 
 安倍首相といえば、米国のトランプ大統領も大好きである。就任前から手土産持参でニューヨークに飛んでいき、「固い握手」をしてもらって大喜びだった。そんな安倍首相を見て、「アメリカのポチ」と言う人がいた。

 となると、安倍首相は、さしずめ「ロシアのポチ」なのだろうか。いや、それ以上の「何か」と言った方がいいかもしれない。なにしろ、トランプ大統領との首脳会談は年3回ほどにすぎないからだ。電話会談はこれまで26回もしているという反論があるかもしれないが、これはトランプ大統領からの「電話連絡」の間違いだろう。

 で、安倍首相はそんなに何回もプーチン大統領と会って、何を話しているのか。「北方領土」を返してほしいと懇願しているのだという。何とかロシアとの間で「平和条約」を結びたいと、一生懸命プーチン大統領のご機嫌を取っているのだという。確かに、これまで安倍首相は「北方領土の返還は私たちの悲願であり、私たちの世代で解決していく決意だ」と述べ続けてきた。

 そこで問題になっているのが、最近の安倍首相の言動だ。昨年11月、24回目となる日露首脳会談で「平和条約交渉の加速でプーチン大統領と合意した」と発表されて以降、「北方領土」「北方四島」といった表現を避け、「領土問題」とだけ言うようになったからだ。

 今年1月30日の衆議院本会議の代表質問では、立憲民主党の枝野幸男代表からこの点を突っ込まれた。すると、安倍首相は「北方領土はわが国が主権を有する島々だ」とやっと口にし、平和条約交渉についても、これまでの「対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場だ」と答弁したのである。

2019年1月、衆院本会議に臨む安倍首相(右)と麻生財務相。手前は代表質問に立つ立憲民主党の枝野代表
2019年1月、衆院本会議に臨む
安倍首相(右)と麻生財務相。
手前は代表質問に立つ立憲民主党の枝野代表
 ところが、2月4日、共同通信が衝撃的なニュースを伝えた。それは、7日の「北方領土の日」に開かれる北方領土返還要求全国大会で、主催する官民の団体が採択する大会アピールをめぐり、「『北方四島が不法に占拠されている』との表現を使わない方向で調整していることが分かった。昨年を含め従来、盛り込まれていた文言。複数の関係者が3日、明らかにした」というものだった。

 北方領土がロシア(当時はソ連)によって不法に占拠されたものでないとしたら、そもそも領土返還交渉も平和条約交渉も有り得なくなる。「不法占拠」、つまり「わが国固有の領土」という表現を使わないということは、「北方領土はロシアのもの」と認めたことになるからだ。いったい、なぜこんなことになったのだろうか。

 共同通信の記事では、「安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による平和条約締結交渉に影響を与えないよう配慮した可能性がある」と書かかれていた。ということは、今大流行の「忖度(そんたく)」が行われたことになるのだろうか。では、いったい誰に「忖度」したのだろうか。