大戦の終結を最終的に決めたのは、1951年のサンフランシスコ平和条約だが、この条約にソ連は調印せず、中国も参加しなかった。日本はこの条約によって、南樺太と千島列島を放棄させられた。しかし、それらをソ連に与えるとはどこにも書かれていない。
 
 多くの人が歴史認識を誤っているのは、ソ連が大戦の「戦勝国」だと思っていることだ。スターリンは、ルーズベルトの援助がなければ、あの独ソ戦には勝てなかった。もし、米国が武器貸与法に基づいて援助しなければ、ソ連はとっくに崩壊していただろう。

 それなのに、戦後は東欧を支配し、ブルガリアとルーマニアを真っ先に手に入れた。1945年12月、ソ連は米国との外交交渉で、日本占領に関して米国の優越的地位を認める代わりに、この2カ国を支配する権利を得た。これも「密約」だが、北方四島はこの時点で、もう戻ってこないと確定したと言っていい。

 さらに付け加えると、現在の中国も戦勝国ではない。毛沢東が率いた「八路軍」(中国共産党軍)は中国奥地を逃げ回っていただけで、日本軍と真正面に戦って、勝ったわけではない。
 
 このように見てくれば、ソ連は国際条約を守らない国であり「侵略国家」である。現在のロシアがソ連の継承国家だとするなら、一度奪ったものを返すわけがない。したがって、平和条約など結ぶ意味がないという結論に達する。

 むしろ、日本は「不法占拠」を続ける「火事場泥棒」に向かって、「不法占拠を続けるなら、その分の地代を払え」と言い続けなければならない。この主張の影響ではないだろうが、これまで「経済援助をすれば2島だけは帰ってくる」という話が盛んに言われてきた。

 どうやら、人がいい安倍首相は、この話に乗っかってきた節がある。しかし、税金を無駄にする「忖度ジャパン」は、もういい加減終わりにしてもらいたいものだ。

 最後に、もっと歴史をさかのぼれば、違った風景が見えてくることを忘れてはならない。北方四島は「日本固有の領土」などと言っているが、本当はアイヌ民族の領土である。クナシリやエトロフなどの地名は、そもそも日本語ではなく、アイヌの言葉である。もともと千島列島には、アイヌ民族のほかに、ウィルタ、ニヴフ、イテリメンなどと呼ばれる北方少数民族が進出していて、そこには一つの生活文化圏ができていた。

北方領土返還を祈念した納沙布岬の「四島のかけ橋」と「祈りの火」から望む歯舞群島
北方領土返還を祈念した納沙布岬の
「四島のかけ橋」と「祈りの火」から望む歯舞群島
 それを1700年代半ばごろから、ロシア人や日本人が進出し、交易を始めるとともに、彼らを奴隷化して土地を略奪したのである。北米大陸に進出した欧州人が、ネイティブアメリカンにやったことと同じことを、ロシア人も日本人もやったのだ。

 土地は結局、そこに住む人間のものではないだろうか。現在、北方四島に日本人は一人も住んでいない。ロシア人が約1万7千人住んでいるだけだ。歯舞群島は誰も住んでいない。

 共同通信の世論調査(2月2、3日実施)では、「安倍首相の在職中に北方領土問題が解決すると思いますか」との問いに、「解決するとは思わない」が88・2%に上っている。当然ではないだろうか。国民の方が、首相よりよっぽど賢い。