平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家)

 2020年末で嵐が活動休止するという一報を聞き、驚きこそなかったが、強く感じたのはジャニーズにしてやられたという思いだ。

 振り返ればここ数年、SMAPの解散、関ジャニ∞(エイト)の渋谷すばるやTOKIOの山口達也の脱退などが相次ぎ、ファンを悲しませる事態が続いている。それだけに、特にSMAPの二の舞を避けるべく、2年も前から活動休止を発表し、「円満ぶり」を演じて先手必勝を取り付けたからだ。

 NGT48の暴行事件でも感じたが、ジャニーズはSMAP騒動ですら、事務所関係者が表に出ることはなかったように、嵐の活動休止に関しても最強の「危機管理能力」を見せつけたと言えるだろう。

 「活動休止」で嵐のファンには活動再開の希望を十分に残しただけでなく、テレビやライブ、CMといったメディアに対する損害を最小限に抑えた。また、最も重要なのは、休止まで2年間という期間だ。この「2年」が意味するものは二つある。

 一つは2020年の東京オリンピック・パラリンピックだ。これまでに何度も言及してきたが、ジャニーズ事務所の社長、ジャニー喜多川氏は自身の集大成として位置付けているのが東京五輪だからだ。ゆえに国民的アイドルである嵐の活動を2020年末まで担保したのだ。

 五輪という大舞台でジャニーズによるエンターテインメントを世界中に知らしめ、そして後継指名した滝沢秀明(タッキー)に引き継ぐというシナリオを明確にしたと解釈すべきだろう。

 もう一つは、『NHK紅白歌合戦』の司会だ。2010年から5年連続で嵐が司会を務め、16年は相葉雅紀、17年は二宮和也、18年は櫻井翔だった。残る松本潤が19年、そして最後の20年にリーダーの大野智で締めくくる構想は既定路線であり、裏側ではNHKとの「手打ち」も済ませているのだろう。ジャニーズにとっても、NHKにとってもやはり紅白は重要だからだ。

 そして活動休止までの2年で1000億円は稼ぐと試算されている通り、これはジャニー氏も織り込み済みだ。SMAPの轍(てつ)を踏まず、きっちりと稼ぐ嵐に対し「YOUたちはもう自由にしていいよ」と最大の賛辞を贈ったと聞いている。
2019年1月27日夜、グループ活動休止についての記者会見を終え、引き揚げる嵐の(左から)相葉雅紀、松本潤、大野智、櫻井翔、二宮和也
2019年1月27日夜、グループ活動休止についての記者会見を終え、引き揚げる嵐の(左から)相葉雅紀、松本潤、大野智、櫻井翔、二宮和也
 また、ファンもマスコミも、SMAP騒動を見て、嵐も例外ではないと感じていたはずだ。もちろん、メンバー同士の確執ではなく、年を重ねたアイドルグループの終焉は、海外の大物ロックバンドでもそうだが、メンバーの1人が将来を見据え、現状に甘んじることへの焦りを抑えきれなくなったときにやってくる。

 嵐の活動休止はこうしたことを踏まえれば、ファンにはショッキングかもしれないが、遅かれ早かれ避けられないことだったと言えよう。