こと、声優という仕事は「自らの声が商品」であるため、実力(演技力)以外の「プッシュして貰うためのアピール」が必要だと考える人が多い。もちろん、どの業界であっても、自己アピールは局面に応じて求められる能力ではあるが、声優業界のこうした節度を超えた、あるいは本来の趣旨や目的を逸脱したハラスメント行為が横行する背景には、声優のフリーランス的な仕事の請け負い方とも密接に関係する。ただ事務所に所属しても、黙って仕事が回ってくるわけではないからだ。そのため、「混浴を拒否する」ことはもちろん、混浴というセッティング自体のハラスメントに対しても、「ノー」と言いづらいのである。

 それにしても昨今の声優業界は、表現力や感受性を培うことを没却し、本来の職務である実力(演技力)部分の努力を軽んじる役者が増えた気がしてならない。もっと言えば、声優たちによるアピール一辺倒の傾向は、もはや度を超えた品格のないものとなり、まるで異国のアングラ産業かと見紛うような世界である。

 その原因の一つには、子供の娯楽だったはずのアニメや漫画が、いつしか「大人をターゲット」にしたサブカルチャーとして発達し、声優が今で言う「ネットアイドル的な人気」を得るようになり、声優専門誌のグラビアや音楽CDの発売、アニメやゲームのイベントパフォーマンスなど、「役者志望」というよりもアイドルを目指して志願する人が増えたからであろう。

 そして、このアニメ産業の変遷に乗じて、声優のプロダクションや養成所、専門学校などが乱立し、大人をターゲットにしたアニメ・声優産業は一大サブカルチャービジネスとして成功した。しかしながら、その成功の礎には最初に述べた「大きな伏魔殿」が隠されているのである。
※写真はイメージです(GettyImages)
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 かつて筆者が知人の妻から個人的に相談を受けた一つのケースだが、業界人である彼女の夫は、ある人気女性声優と不倫関係にあった。ところが、この声優から「そんなの(不倫であろうと裏接待)はこの業界では常識ですよ」と直接言われたことがあったという。彼女はその後、夫が他にも複数の女性声優と不倫関係にあったことを突き止め、過去にドメスティック・バイオレンス(DV)を受けていたことなどと合わせ、裁判を経て離婚した。彼女は今、成長期の子供たちを連れ、たった一人で育児と仕事に追われている。