田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者は、菅義偉(よしひで)官房長官の定例記者会見での自説を交えた長い質問で有名である。時には、質問というよりも自説の開陳とでもいうべきものがあり、それは事実確認の後に自社で記事にすればいいのではないか、と思うことがある。

 SNS(会員制交流サイト)時代の現代では、各メディアの記者本人がツイッターで意見表明もしている。望月記者の発言もしばしば注目されるので、何も記者会見で「演説」しなくてもいいのではないか、と思うのだが。

 いずれにせよ、記者クラブという閉鎖的なコミュニティーの一員が、その特権を活用して質問している。特権を持つ人たちは、その権利の行使が自分たちに当然に認められていると錯覚する場合がままある。

 他方、インターネットメディアなどは申請しないと記者会見には参加できないし、その曜日も限られているという。望月記者が菅長官相手に「言論の自由」を謳歌(おうか)する一方で、そのための時間は既得権(いわば取材の不自由の行使)の産物ということになる。記者会見に参加できない多くの人は、望月記者に取材時間を奪われ、さらには筆者のようにその内容にげんなりしている人も無視できないほどいるだろう。

 事実、大阪経済大学の黒坂真教授は、次のようにコメントしていて、筆者も同意する内容だった。

 官房長官の記者会見は記者との公開討論会ではない。官房長官の見解を聞く場です。それを新聞は紙面で論評すれば良い。望月記者の質問は長すぎます。これを他社の記者もやったら、記者会見が毎日数時間かかる。官房長官は記者会見を廃止する。権利の要求には節度が必要です。

『女性セブン』に掲載された東京新聞の望月衣塑子記者=2017年11月
『女性セブン』に掲載された東京新聞の望月衣塑子記者=2017年11月
 ただ、「節度」は価値判断なので、望月記者のファンには受け入れられないかもしれない。ところで、望月記者のツイッターを最近読んで、以下のコメントには同意できないものがあった。

 統計不正 2015年1月のサンプル入れ替え後、実質賃金が下がった。それに激怒したのが菅義偉官房長官という。2017年2月に菅氏は、政府の統計改革推進会議の議長に就任。様々なGDPの嵩上げや統計不正は政治的圧力がなければ、起きえなかったのでは。