国会議長の発言を見て、私はソウル特派員をしていた2012年8月に李明博大統領による似たような発言があった時のことを思い出した。あの時は李氏による竹島上陸直後であり、そもそも大統領という最高指導者の発言だっただけに日本側の反応はきわめて激しくなった。韓国側でも「あれは行きすぎた発言だった」と批判されたが、それは日本側の反応を見てから出てきたものであるように思えた。

 文議長と李元大統領の共通点は「日本側の反応をあらかじめ考えることなく発言した」ことである。別の言い方をすれば、日本との関係に細心の注意を払おうとする感覚の欠如だろう。現在の文政権は発足当初には日韓関係に配慮しようとしていたが、米朝首脳会談や南北首脳会談など北朝鮮との対話が進んできた昨年夏ごろからはそうした姿勢が薄らいでいる。

 文在寅大統領が今年の年頭記者会見で徴用工訴訟について質問された時に、過去の不幸な歴史に起因する問題だと指摘して「日本政府がもう少し謙虚な立場を取るべきだ」と語って日本側の反発を買ったのも同じことだ。徴用工問題が日韓関係の根底を突き崩しかねないという日本側の懸念は、韓国側では一部の専門家にしか共有されていない。

 直近の日韓関係のイシューといえば、韓国海軍艦艇による自衛隊機へのレーダー照射問題だ。日本では大きく報道されたが、韓国メディアでの関心はいまひとつだった。1月下旬に会った駐日韓国大使館の政務担当者は「さすがに日韓関係がここまで悪くなってくると韓国政府内では関心が高まってきたけど、一般の人はそうでもない。韓国は国内政治がゴタゴタしすぎているから、人々の関心が向くのはそちらばかり」と困ったように話していた。

 レーダー問題では韓国側主張に無理が目立ったから、日本側に強い不信感を抱かせてしまった。それだからか日本では韓国側の不可解な強硬姿勢に対して「文政権が支持率上昇を狙った」という解説が一部に出たが、こうした十年一日のような珍説にはため息しか出てこない。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
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 そもそも政権発足当初に比べて下がったとはいえ、文氏の支持率は40%台後半だ。文政権は支持率を強く気にする傾向にあるとはいえ、外交的な無理をしてまでと考えねばならない水準ではない。本当の専門家はこんな無責任なことを言わないので、発言者を信用できるかどうかのバロメーターには使えるかもしれないけれど…。

 では実際には、韓国の世論はどうだったろうか。