西岡力(麗澤大学客員教授、モラロジー研究所教授)

 韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が2月8日に配信された米国通信社とのインタビューで天皇陛下が元慰安婦に直接謝罪をすれば慰安婦問題を解決できると語るとともに「(天皇陛下は)戦争犯罪の主犯の息子ではないか」と発言し、物議を醸している。

 現在日韓で対立しているのは慰安婦ではなく、戦時労働者(徴用工)問題だ。だから、文議長のこの発言は何か意図を持って行ったのではなく、通常思っていたことをそのまま口にしたのではないか。つまり、韓国の現在の与党議員に代表される左派知識人らは昭和天皇が慰安婦の性奴隷化に責任がある戦争犯罪人だという認識を持っているのだ。

 文議長は日本で抗議の声が上がると、「戦争時の日本の国王の息子だという意味の発言で戦争犯罪という言葉は使っていない」と弁明したが、通信社が公開した音声から彼の弁明は虚偽で、実際に「(謝罪をするのは)日本を代表する天皇がされるのが望ましいと思う。その方はまもなく退位すると言われるから。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。だから、その方がおばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言言えば、すべて問題は解消されるだろう」と語っていたことが明らかになった。

 それでも文議長は謝罪を拒否し、「私が言った言葉は普段からの持論で、10年前から話してきたことだ」「根本的な解決方法に関しては今もそのように考える」と説明し、「真摯(しんし)な謝罪の一言で終わることをなぜこんなに長い間引きずるのかということに私の言葉の本質がある」と述べた。

 安倍晋三首相は12日の国会で「本当に驚いた。甚だしく不適切な内容を含むもので極めて遺憾だ」と述べるとともに、外交ルートで強く抗議し、謝罪と撤回を求めたことを明らかにした。

 多くの日本人が怒りの声を上げたのは、国会議長という国家中枢の地位にいる人物が、日本国の象徴である天皇陛下を戦犯の息子扱いして謝罪を求めたことだ。文議長は前述のように、自分の発言は「持論で、10年前から話してきたことだ」と言っている。
米ワシントンにある大韓帝国時代の施設を訪れた韓国の文喜相国会議長=2019年2月12日 (聯合=共同)
米ワシントンにある大韓帝国時代の施設を訪れた韓国の文喜相国会議長=2019年2月12日 (聯合=共同)
 しかし、隣国の国民が国の象徴として奉っている天皇陛下について、外国メディアに発言すれば隣国国民の感情を傷つけるという当たり前の事実への配慮がない。歴史観は国や民族が異なれば一致できないが、だからこそ少なくとも外交においては、相手が自分の持論とは異なる歴史観を持っているという事実に配慮するべきなのだ。そのような外交上の初歩的な礼儀を議長が身につけていないことに、多くの日本人はあきれている。

 安倍首相が強い言葉で抗議したことは正しい。やはり、外交では相手が分かるようにこちらの怒りを伝えることが必要だ。その場合、具体的な問題を指摘してそれに対して強い遺憾の意を表するというやり方を取る必要がある。問題を拡散させて民族性などの議論に持っていかず、あくまでも文議長発言を問題にして繰り返し謝罪と撤回を求め続けることが肝要だ。