ベルトコンベヤーが動き出した。必死で冊子を封筒に入れる。だけどタイミングがずれると作業が終わらないまま、次の人に流れていってしまい、パニック。

 川上から、「止めてくださ~い」という声があがった。「ごめんなさい、止めてください」「すみませんっ」。

 同じ人が4回目に手を挙げたとき、Hさんは「いい加減にしてッ。何回失敗をするの」と、ヒステリックな声をあげたんだわ。

 空気が張り詰めたその直後のこと。今度は私がはがきを入れ忘れた。ラインを止めないと! だけどそうはしなかった。「面倒なことはやめ、やめ」ととっさに黒い私がささやき、頬かむり。

 何日か同じ職場で働くなら、面罵を受け入れたと思うよ。でも「今日だけ」だしなぁ。

 ときどき食品の“異物混入”がニュースになるけれど、原因はこんなことではないか、などと思っているうち、封入れ作業に慣れて、私は二度とミスをしなかった。

 午後5時。“吉幾三”が私たちパートの間を、「7時まで残業をお願いできませんか?」と言って回り出した。無言。とうとう、「怒鳴られてまで働きたくないです」と吐き捨てた人の後に次々と5人が続いて帰った。

 さて、怒鳴ったHさんはどうする。自分のせいで5人の労働力を失った後始末は? 時給に150円プラスの条件もさることながら、事の顛末を見届けたくて私は残った。

 だけど、期待したようなことは何ひとつ起こらないんだよね。仲間から「みんな帰っちゃったから、あと3時間は頑張らないと」と、あからさまに嫌みを言われても、「もう、やんなっちゃうよね」とどこ吹く風。

 なるほどね。そのときの感情で場を仕切るけど、“責任”は取らないHさん。そして1日だけの職場だと思って、職業的な良心がグッと低くなった私。

 どっちもどっちだわと、今は思うけど、もう一度同じことが起こったら…。やっぱり機械を止められないかなぁ~。

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